主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「兄様、今夜の百鬼夜行…私もついて行っていいですか?」


銀と雪男と一緒に地図を見ていた朔は、朧の格好に呆れて肩を竦めた。


「その格好は、駄目って言っても無駄な感じだね」


たすき掛けをして、白い袴を履き、長い髪をひとつに結んだ朧はにっこり微笑んだ。


「ありがとうございます」


「じゃあ雪男、お前に任せた。猫又に乗って行け」


「了解」


皆には正式に祝言が決まるまではふたりの仲は秘密にしてある。
雪男は感情を隠すのが上手く、朧は喜ぶ猫又にの沢山ある尻尾を触りながら雪男にも頭を下げた。


「主さま、私もご一緒してよろしいでしょうか」

「えっ、ちょ…母さん?」


突然氷麗がそう尋ねると朔が考えを巡らせ、その間に銀が馴れ馴れしく肩を抱いて顔を近付けた。


「これは十六夜の百鬼夜行ではないぞ。あ奴でなければいやなんじゃないのか」


冷めた目で肩に乗った銀の手に息を吹きかけると瞬時に凍り、銀は金の目を細めて尖った八重歯を見せた。


「私に触らないで」


「ふむ、十六夜ならいい、と解釈したぞ」


どこまでもからかう気満々の銀の尻尾を朔が思い切りつねると氷麗から手が離れ、雪男が銀の刀の鞘で頭を叩く。


「しょうもないことを言うな。氷麗、今回は特例だ。息子の活躍でも見て楽しめ」


ーー朔自身も氷麗にものすごく観察されているのを感じていた。

なまじ父が性格はともかく百鬼夜行の頭として最高だったので、比べられているのだろうと分かっていた。


「お師匠様、久しぶりにご一緒できますね」


「おう、そうだな。ま、俺が守ってやるから安心しろよ」


そんな何気無いやりとりでも幸せを感じる。

猫又に乗り込むと、雪男が前になった。

腰に手を回して周りに勘付かれない程度にくっつく。

もう少しで夫婦になれるーーその日を待ちわびて、頰を寄せる。