いつかは嫁を貰って故郷に戻って来てくれるーーそんな幻想を抱いていた氷麗は、嫁になる女が半妖だと知って動揺を隠せないでいた。
この屋敷は勝手知ったる我が家のようなもなのだったので、気分転換にと縁側を歩く。
かつて何もなかった庭には花が咲き乱れ、知らない調度類も多い。
そこここに息吹の影が散らつき、足が止まる。
「どうした」
「!主さま…」
気配もなく背後を振り返ると風呂上がりで濡れた髪もそのままの朔が立っていた。
…先代は何者も近寄れないような恐ろしさがあったが、朔の雰囲気は柔らかく、陽のようにあたたかく感じる。
「いえ…何でも…」
「暇なら少し話に付き合ってくれ」
先代は百鬼に話を振ったことなどない。
だが朔の何気ない所作にははっきりと先代の面影があり、どうしてもちらちら見てしまった。
「雪男はよく支えてくれている。俺が幼く活発で言うことを聞かなくとも辛抱強くてな」
「…我慢強さはあの子の取り柄ですから」
「だから父と確執があってもよく耐えている」
「…」
懐柔しようとしているのか、と氷麗が身構える。
だが朔は大きく伸びをしながら首を鳴らし、氷麗に柔らかく微笑んだ。
「俺の妹は物心つく前からあれに興味を持ち、そして恋をした。その想いが叶うのは奇跡の何物でもない。だから一緒に見守らないか」
「…先代のお嬢様をお嫁にだなんておこがましいですわ…」
「うちは兄妹が多い。多少風変わりでも母が破天荒だから心配ない。氷麗、雪男を縛らずにしばらく様子を見守ってやってくれ」
「…はい」
先代とは全く何もかもが違うが、一緒なのはとてつもない吸引力があること。
朔の笑みにまた参りそうになった氷麗は、けれどその傍から離れがたく、一緒に咲き乱れる花を眺めて心を静めた。
この屋敷は勝手知ったる我が家のようなもなのだったので、気分転換にと縁側を歩く。
かつて何もなかった庭には花が咲き乱れ、知らない調度類も多い。
そこここに息吹の影が散らつき、足が止まる。
「どうした」
「!主さま…」
気配もなく背後を振り返ると風呂上がりで濡れた髪もそのままの朔が立っていた。
…先代は何者も近寄れないような恐ろしさがあったが、朔の雰囲気は柔らかく、陽のようにあたたかく感じる。
「いえ…何でも…」
「暇なら少し話に付き合ってくれ」
先代は百鬼に話を振ったことなどない。
だが朔の何気ない所作にははっきりと先代の面影があり、どうしてもちらちら見てしまった。
「雪男はよく支えてくれている。俺が幼く活発で言うことを聞かなくとも辛抱強くてな」
「…我慢強さはあの子の取り柄ですから」
「だから父と確執があってもよく耐えている」
「…」
懐柔しようとしているのか、と氷麗が身構える。
だが朔は大きく伸びをしながら首を鳴らし、氷麗に柔らかく微笑んだ。
「俺の妹は物心つく前からあれに興味を持ち、そして恋をした。その想いが叶うのは奇跡の何物でもない。だから一緒に見守らないか」
「…先代のお嬢様をお嫁にだなんておこがましいですわ…」
「うちは兄妹が多い。多少風変わりでも母が破天荒だから心配ない。氷麗、雪男を縛らずにしばらく様子を見守ってやってくれ」
「…はい」
先代とは全く何もかもが違うが、一緒なのはとてつもない吸引力があること。
朔の笑みにまた参りそうになった氷麗は、けれどその傍から離れがたく、一緒に咲き乱れる花を眺めて心を静めた。

