主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

最初は軽く、徐々に深い口付けへと変わるーー


隠れながらの逢瀬はより燃え上がり、欲深く次へと移行したがる…がーー


「…もっと…」


「駄目駄目駄目駄目、これ以上はちょっと自制効かなくなるから」


朧の自室で一瞬だけ締め切った室内。

とろんとした目で口付け以上を求めてくる朧の駄々をなんとか交わしながら今まで耐えてきたが、そろそろ雪男の限界も近い。


「でも…」


「駄目だって。俺も我慢してんの」


耳元で息を吹きかけ、優しく耳たぶを触っただけで朧の身体は跳ね、漏らしそうになる声を手で塞いで呑み込む。


「我慢って…?」


「男には色々あんの。これ以上は祝言を挙げるまでは…」


何かを感じて顔を上げた雪男は、朧を膝から下ろして機敏に立ち上がると端麗な顔を歪めた。


「やべえ…来やがった!」


「だ、誰が…」


「お前は部屋から出るなよ!」


そう言い残して部屋を飛び出た雪男は、真っ先に玄関に向かい、すでに来訪者を出迎えていた朔の傍に立つ。


「お前が雪男の母か」


「左様にございます。主さま、お初にお目にかかります」


深々と頭を下げた母親に雪男は引きつった笑みを浮かべた。


「母さん…久しぶり」


「ええ本当にね。文なんて送ってくるから驚いたわ」


雪男とそっくりの白皙の美貌ーー真っ青な長い髪を結い上げ、真っ白な着物に艶やかな笑みを浮かべて当代の朔を見つめた。


「名を氷麗(つらら)と申します。通り名でございます。真の名は先代が」


「今も父の百鬼というわけか。へえ」


無邪気に笑った朔に不覚にもどきっとした氷麗は、なるべく視界に入れまいとどこか狼狽えている息子に的を絞った。


「さあ、この母に呼び出した経緯を話してもらいますよ」