主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

朔の元には毎日大量の文が届く。

恋文だったり、人に悪さをしたり食ったりしている妖の情報など様々な内容を側近である雪男と精査して百鬼夜行の目的地を決めたりしていた。


「何故俺の隣で文を書いてるんだ?」


「いやあ…母さんに文なんて今まで書いたことないしさ。主さまに確認してもらおうと思って」


居間で肘掛に頬杖をつきながら文を読んでいた朔の隣には雪男が居て、真っ白なままの紙をじっと見つめていた。


「嫁を取るから来てくれ、でいいんじゃないか?」


「母さんはさ、先代の時代に百鬼だったんだ。先代の娘なんて知ったら親子の縁切られるかも…」


不安を口にする雪男を放置して文を読みつづけていた朔は庭から視線を感じて目を上げると、朧が美しく咲いた花を手に何やら言いたげな顔をしていた。


「朧?」


「あの…父様はお元気でしょうか」


暗に祝言の許しをもらえるかどうか聞いてきた朧を呼び寄せた朔は、まだ真っ白なままの紙を前に唸っている雪男を指した。


「近々雪男の母親が来る。答えはそれでいいかな?」


「え…っ、雪男の…母様?!」


「何だよ俺にも母親くらい居るぞ。父親は早くに死んだけどな」


ーーつまり、事は順調に進んでいるということ。

今すぐ雪男の腕に抱きつきたかったが縁側には銀も焔も居たため、朔の隣にきちんと正座して頭を下げた。


「兄様、父様は大丈夫ですよね?」


「うん、まあだいぶ柔軟になってきたみたいだけど。みんな頑張ってるよ。だからお前も安心しなさい」


「はいっ」


少しだけ目を上げた雪男と目が合う。

口角を少しだけ上げて笑む雪男に胸の高鳴りを抑えきれず、朔の茶を奪い取って一気飲みすると、雪男の母親はどんな方だろうと想像しながら、ずっと朔の腕に引っ付いていた。