主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

朔が戻ってきたのは夕刻を過ぎてからで、帰りを待ちわびていた雪男と朧が出迎えると、話をする間もなく百鬼夜行の準備へ取り掛かった。


「あの…兄様」


「ああごめん、戻ってきてから話すよ。待ってて」


大事な務めを遅らせるわけにもいかないので朧が小さく頷くと、朔は頭を撫でて銀と簡単に作戦会議をして慌ただしく出発した。

静かになった屋敷には焔と山姫が残っていたので雪男は涼しい部屋に移動してごろりと横になった。


「あんなに戻りが遅れるだなんて…揉めたんだろうなー…」


独りごちていると、声をかけられるでもなくいなり襖が開き、朧が駆け寄ってきて傍にすとんと正座した。


「父様…怒ったでしょうか」


「ああまあ、俺にだろうな。仕方ないさ、俺がいけないんだから」


息吹の次はその娘の朧ーー言い訳できる状況でもなかったので小さくため息をつくと、朧もころんと横になって胸の中にすり寄ってきた。


「お、おい」


「これ位いいじゃないですか。…お師匠様があったく感じるなんて夢みたい」


「他の奴らには冷たく感じるんだろうけどな。…ところで…」


顔を上げた朧に腕枕をしてやりつつ、雪男は意地悪げに笑って朧の鼻をつまむ。


「手を出してはいけない…それってどの辺のことまでなんだろうな?」


「どの辺っていうのは?」


「例を挙げると、まあ…口まではいいけど脱がしちゃいけないとか?」


口に出してみると妙に恥ずかしくなり、赤くなる顔を朧に見られまいとぎゅうっと抱きしめると、先制攻撃のように朧が唇を重ねてきた。


「私…お師匠様のお嫁さんになるんだから、これ位許してもらえますきっと」


猫のようにすりすり頬ずりしてくる朧が可愛らしく、頰に手をあてて顔を斜めにすると、深く唇を重ねた。

一瞬身体が強張った後さらに侵食すると、脱力してぐったりした朧の目は潤み、恥ずかしそうな顔を伏せた。


「な、なんか…知ってるのと違う…」


「だってやらしいのしたもん」


「私に…色々教えて下さいね」


ーー鼻血が出そうな色気に敢え無く撃沈した雪男は身体を起こして両手で顔を覆った。


「色々って…」


「私を触っていいのは生涯お師匠様だけ。覚えていて…」


愛しさにきつく朧を抱きしめる。

例え十六夜に反対されようとも、断固戦ってやろうと心に決めて、また唇を重ね合う。