主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

長年仕えてくれている雪男を信頼しているし、信用している。

地味に落ち込んでいる雪男につい笑ってしまった朔は、ぽんと肩を叩いて茶目っ気たっぷりにからかった。


「じじいと言ったのは冗談だ」


「いや…まあ長く生きてるのは確かだし」


「お前と朧が心を通わせて今現在死なないというのは分かった。ということは、俺には反対する余地もない」


「じゃ、じゃあ…」


朔はこれからの工程を天井を見ながら考えて、息をつく。


「父様はお前を目の敵にしている」


「まあ…そうだろうな」


「今お前が父様に挨拶に行けば殺される。それは俺も困るから、この話は一旦俺の預かりとさせてほしい」


ーー朔からの許しに雪男の目が輝く。

ただ、十六夜という難敵はちょっとやそっとの説得ではどうにもできないこともよく知っているので、深く頭を下げた。


「主さま…お願いします」


「俺の説得でどうにかできればいいが…時間がかかると思ってくれ」


朔は頼りになる。
側近としてそれをよく知っている雪男が深く頷くと朔も小さく頷き、最後に釘を刺した。


「ということで、祝言にこぎつくまで朧には手を出すなよ」


「え…」


「人の世ではな、女は祝言の日まで操を守ると決まっている」


「ええと…頑張ります…」


朔に促されて蔵を出ると、さも面白そうに笑いながら振り返る。


「祝言までいけば、俺を“お義兄様”と呼んでもいいぞ」


「あ…そうなるのか。いやいや無理無理っ」


「父様に“お義父様”と言えるか?血の雨が降るな」


まだまだ悩みの種は沢山あったが、朔は楽しそうにしていて、気が晴れた雪男は早く朧に会いに行きたくて早足で屋敷に戻った。