主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

密談は蔵の中で行われた。

腕を組んでじっと見つめてくる朔の視線に耐え得る者はそうそう居らず、やましいことをしてしまった雪男は尚のことその視線を受け止めきれずにしどろもどろになっていた。


「主さま、そういえば敵討ちってどうな…」


「物言えぬようにしてやった。で、お前は報告は?」


ーー逃れられるはずもなく、変な汗をかいている雪男に近寄った朔は、妖の中でもかなり上位の美形に入る雪男の目を覗き込む。


「大体は理解している。大まかでいいから話せ」


朔に怖気付くようではそのつぎに待ち受ける十六夜の前に立つことなど到底できない。

深く呼吸して自身を落ち着かせた雪男は、覚悟を決めて朔と視線を合わせた。


「俺たち雪男や雪女の成り立ちって知ってるか?」


「大体は。詳しくは知らないから教えてくれ」


…博識な朔が知らないはずはなく、話をさせて落ち着かせようとしてくれている真意に気付いた雪男は、感謝しつつ故郷を思いながら話し始めた。


「俺たちはめっきり数が少ないんだ。人里に下りて生活してる奴も多くて、だから…人と接することも多い」


「人に迫害されてきたと言いたいのか?」


「正体がばれればもちろんそうなる。でも…中には夫婦になる奴も居る。もう長い間現れてないけどな」


人と夫婦になった者は伴侶が死ねば、その先の気の遠くなる人生を苦悩しながら生きてゆく。

朧は半妖だから、短い人の生で死ぬことはない。
今からの長い人生を共にーー


「…お前みたいなじじいに妹を嫁がせるなんて俺は反対だな」



……我が耳を疑った雪男は、よろめいて目を白黒させた。


「え…あ…あの…主さま…?」


「お前は若く見えるが実はじじいの部類だろう。ぎんと同い年位か?」


「あ、あの…歳が離れてるのが問題…?」


「人の常識からいえばそうだな。ちなみに幾つだ?言ってみろ」


ごにょ、と歳を明かすと、朔は何故か無邪気に笑って雪男の肩を叩いた。


「やっぱり。歳が離れすぎてる」


「主さま聞いてくれ!俺は…決めたんだ」


朔は、“何を?”と聞かなかった。

その答えを知っているから。