主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

うなされながらも少し離れようとするとうっすら目を開けて寂しがる朧のためにずっと傍に座っていた。


ーー人は儚く脆い。

先代も妖と人という許されない恋の間に悩み抜き、苦しんだ。

病など無縁の妖にとって理解できないものだったが、額に汗がにじむ朧が哀れで離れられない。


「暑、い・・・」


「え、あ、そうか、着替え・・・」


浴衣の下は・・・素肌だ。

病人とはいえ朧の身体を見て平然といられる胆力を持ち合わせている自信のない雪男は焦り、とりあえず箪笥から替えの浴衣を引っ張り出す。


「朧、自分で着替えれるか?・・・んなわけないか・・・やっぱ俺が・・・」


熱のせいで体温の高い身体を素手で触ると火傷してしまう。

ぽんと朧の胸元を叩いて安心させようとした雪男は立ち上がり、なるべく優しげな声色を出す。


「ちょっと待ってろ!すぐ戻るから!」


探し物は朔の部屋にある。

無断で入ればどんな仕置きをされるか想像するだけで怖かったが、部屋の前で律儀に頭を下げると中へ入り、本棚の上に置いてあった獣の皮で作った手袋を掴むと朧の元に急ぎ足で戻る。

この手袋は年に数回行われる大討伐に使われるもので、いつも先陣を行く朔が刀を持つ手が返り血で滑らないように作られたもの。

熱も通さないのでこれできっとーー


「朧・・・ごめんな、見ちゃうけど・・・俺しか見ないから」


全身汗に濡れている身体をそのままにしておくのな逆に悪い。

覚悟を決めた雪男は手袋を嵌めて、朧の身体を起こした。