主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

居間に戻ると朧は料理に手をつけることなく横になっていた。

急な発熱に寒気が止まらず、抱き抱えて朧の部屋へ運びら敷いた床に横たえさせると、できることのあまりの少なさに唸ってしまう。


「ええと…部屋を温めて、飯食わせて、汗かくから着替え……俺できねえじゃん…」


熱に弱く、また着替えさせるなど到底できないことに頭を悩ませ、やはり山姫を頼るしかないと腰を上げかけた時ーー朧がか弱い声で雪男を引き止めた。


「傍に…居て…」


「ゆっくり寝た方がいいって。隣の部屋に居るからなんかあったら呼んで…」


「お願い…」


ほぼほぼ自分の責任で風邪を引かせてしまった以上無下にもできず、また座り直して頭を下げた。


「ごめん、俺のせいだよな」


「いいえ…私が…はしゃいだから…」


「人って弱い生き物だった。まあお前は半分だけど。考えれば息吹は人なのに風邪ひとつ引かなかったな」


とりあえず盥に水を張って準備をしていたので手拭いを浸して絞り、朧の額に乗せる。

寂しいのか虚ろな目でじっと見つめてくる朧を安心させるために暗示をかけるように低くちいさな声で笑いかけた。


「大丈夫、傍に居るから。目を閉じるとすぐ眠たくなる。ずっとついてるから心配するな」


話す気力もないのか言う通りに目を閉じるとすぐに寝息が聞こえた。

あどけない寝顔を飽くことなくずっと見ていた。