迷子中の焔に見られてはいけない。
離れがたかったが朧に後ろを向いてもらって先に着替えると、辺りの捜索にあたった。
あのような大妖の気配はそうそう消えるものではないのですぐに見つかり、途方に暮れている背に声をかける。
「おいこら迷子野郎。泉を通り過ぎてたぞ」
「え、ありましたか?てっきりまだ奥かと…」
「もういいよ。朧も涼んだみたいだし陽も暮れる。帰ろう」
また焔が迷うといけないので先導して歩いていると、含み笑いが聞こえた。
「何か…ありましたか?」
「は?何が?」
「いえ別に」
気にはなったが狐はよく化かすし、いちいち相手にしていると身が保たない。
程なくして泉が見え、足を浸けていた朧がにこっと笑った。
「やっぱり迷子になった」
「失礼しました。もう遅くなりましたし戻りましょう。また付き合って頂けますか」
「はい」
ーーふたりの会話を聞くのにも心の余裕ができた。
朧は自分を好いてくれているーーそれが分かっただけでも大きな進歩。
待たせていた朧車に乗り込むと、雪男と同じように気持ちの確認ができて幸せいっぱいな朧が隣にすり寄る。
「ちょっと待て、さっきは水の中だったからいいけど今は違う。離れてろよな」
「直に触らなければいいんですよね?…あの…」
「ん?」
ーーあなたの真の名は?
そう尋ねてみたかったが、教えてくれるだろうか?
呼んでみたい。
強くそう思ったが、雪男本人が教えてくれるまで待とう。
「なんでもありません」
か細く囁いて、雪男の長くて白いまつ毛に見惚れていた。
離れがたかったが朧に後ろを向いてもらって先に着替えると、辺りの捜索にあたった。
あのような大妖の気配はそうそう消えるものではないのですぐに見つかり、途方に暮れている背に声をかける。
「おいこら迷子野郎。泉を通り過ぎてたぞ」
「え、ありましたか?てっきりまだ奥かと…」
「もういいよ。朧も涼んだみたいだし陽も暮れる。帰ろう」
また焔が迷うといけないので先導して歩いていると、含み笑いが聞こえた。
「何か…ありましたか?」
「は?何が?」
「いえ別に」
気にはなったが狐はよく化かすし、いちいち相手にしていると身が保たない。
程なくして泉が見え、足を浸けていた朧がにこっと笑った。
「やっぱり迷子になった」
「失礼しました。もう遅くなりましたし戻りましょう。また付き合って頂けますか」
「はい」
ーーふたりの会話を聞くのにも心の余裕ができた。
朧は自分を好いてくれているーーそれが分かっただけでも大きな進歩。
待たせていた朧車に乗り込むと、雪男と同じように気持ちの確認ができて幸せいっぱいな朧が隣にすり寄る。
「ちょっと待て、さっきは水の中だったからいいけど今は違う。離れてろよな」
「直に触らなければいいんですよね?…あの…」
「ん?」
ーーあなたの真の名は?
そう尋ねてみたかったが、教えてくれるだろうか?
呼んでみたい。
強くそう思ったが、雪男本人が教えてくれるまで待とう。
「なんでもありません」
か細く囁いて、雪男の長くて白いまつ毛に見惚れていた。

