陽も高く、うだるような暑さは雪男にとって天敵だ。
傘は欠かせず日向では普段の力も満足に出せないが、朧と焔をふたりきりにさせるわけにはいかない。
「では出発いたしましょう」
「でも・・・焔さん方向音痴って・・・」
ぽつりと朧が呟き、朧を横目で見た雪男は居間の戸棚から地図を出した。
毎夜行われる百鬼夜行のため皆が詳細に書き記したもので、顎に手をあてて地図を覗き込んでいる焔に一応聞いてみる。
「その泉がどの辺か分かるか?」
「ええ、大体・・・この辺かと・・・」
指した場所は鬱蒼とした森に囲まれており、雪男の記憶ではそこに泉はないのだが、鼻を鳴らして地図を閉じた。
「まあ何とかなるだろ。さてどうやって行くか・・・」
「私が転変するので背に乗ればよろしい」
「俺が調達しておいた。あれに乗って行け」
朔が空を指すと、朧車が音もなく降りて来る。
「では私は警戒がてらそれには乗らずに行きます。あなたは中に」
指図されていい気分ではなかったが、うきうきしている朧に愚痴をこぼすわけにもいかず、共に乗り込む。
「主さま、夕刻までには戻るから」
「ああ、たまには羽を伸ばして来い」
激務が当然と思っていた風の先代とは違って息抜きも与えてくれる朔に感謝しつつ互いに手を振り合い、御簾を下げて出発した。
朧にとっては生まれてはじめて都を出た嬉しさでついはしゃいで上空を行く朧車の御簾を少し上げて外を眺めたり声を上げて喜んでいるとーー
足を投げ出してくつろいでいた雪男と目が合った。
とても優しい眼差しでーー何かを期待せずにはいられなかった。
傘は欠かせず日向では普段の力も満足に出せないが、朧と焔をふたりきりにさせるわけにはいかない。
「では出発いたしましょう」
「でも・・・焔さん方向音痴って・・・」
ぽつりと朧が呟き、朧を横目で見た雪男は居間の戸棚から地図を出した。
毎夜行われる百鬼夜行のため皆が詳細に書き記したもので、顎に手をあてて地図を覗き込んでいる焔に一応聞いてみる。
「その泉がどの辺か分かるか?」
「ええ、大体・・・この辺かと・・・」
指した場所は鬱蒼とした森に囲まれており、雪男の記憶ではそこに泉はないのだが、鼻を鳴らして地図を閉じた。
「まあ何とかなるだろ。さてどうやって行くか・・・」
「私が転変するので背に乗ればよろしい」
「俺が調達しておいた。あれに乗って行け」
朔が空を指すと、朧車が音もなく降りて来る。
「では私は警戒がてらそれには乗らずに行きます。あなたは中に」
指図されていい気分ではなかったが、うきうきしている朧に愚痴をこぼすわけにもいかず、共に乗り込む。
「主さま、夕刻までには戻るから」
「ああ、たまには羽を伸ばして来い」
激務が当然と思っていた風の先代とは違って息抜きも与えてくれる朔に感謝しつつ互いに手を振り合い、御簾を下げて出発した。
朧にとっては生まれてはじめて都を出た嬉しさでついはしゃいで上空を行く朧車の御簾を少し上げて外を眺めたり声を上げて喜んでいるとーー
足を投げ出してくつろいでいた雪男と目が合った。
とても優しい眼差しでーー何かを期待せずにはいられなかった。

