主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

何故か下な話題で盛り上がり、特に朔の隠されていた武勇伝で騒ぎまくっていると、何故か流れ矢が飛んできた。


「お前はどうなんだ雪男。かなり遊んでいたと聞いているぞ」


「まあ地元ではな。俺いいとこの子だったし長子だし。来る者拒まずだったし」


「お前がいつまでも嫁を取らないから期待を抱いて待っている娘も居るとか居ないとか」


何故か事情通の銀が団子を頬張りながら尻尾を揺らす。

朔も茶を口に運びながら待っている風だったので、頰をかきながら故郷を出てきた頃を思い返した。


「先代の強さに憧れててさ、俺。性格はすげえ悪いんだけど、どうにかして百鬼になれないもんかなと思って出てきた」


「そんなお前が今や古株だもんな」


「会うなり“力を示せ”って斬りかかられて。めっちゃ怖かった」


そんな昔話をしていると、背を向けた焔が朧に顔を寄せて口づけをしているような光景が目に入り、あからさまに不機嫌になる。

ーーどうやらそれは意図的だったらしく、近づいて来る焔は明らかに挑発的な口調で朔に声をかけた。


「主さま、お願いがあるのですが」


「ん、なんだ」


「朧様が私の知っている泉に興味があるとかで出かける許可を頂きたく。ふたりで」


ふたりで、を強調され、雪男の眉が上がる。

朔は団子を飲み込んで、ちらりと朧に目をやった。

朧は朔の視線に気付き、何度もちらちらと雪男に視線をやる。

兄妹の言葉にならない意思表示が成立し、朔は隣に座る雪男の肩を拳で軽く叩いた。


「護衛をつける。三人で行って来い」


「…はい、ありがとうございます」


間を置いて謝辞を述べて頭を下げた焔を見て銀が噴き出す。


「残念だったな、息子よ」


「何のことですか。失礼します」


「主さま、俺…行っていいのか?」


「行け。注意を怠るなよ」


ぱあっと顔が明るくなった雪男に笑いかけ、朧に小さく親指を立てる。

その合図に、朧も雪男と全く同じ笑顔になった。