主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「そんな所で何をされているんです?」


柱の陰で銀と雪男が戦っているのを見ていた朧を見つけた焔は、朧のきつく噛み締めた唇と表情に足を止めた。

その視線の先に見た光景は、現在の朔の手足となっている恐るべき力を持った者同士の戦いだ。

焔はどちらかといえば有利に見える雪男の動きに驚きを隠せないでいた。


「どうしてあんなことに?」


「・・・わかりません。でも・・・」


恋をしている目ーー庭先から朧を見上げていた焔はじっと見つめた後、縁側に座って隣をぽんと叩いた。


「こちらへ。しかし・・・激しいですが美しい戦いざまだ。喧嘩というわけでもなさそうだし、あの父と互角に戦える者は少ないというのに」


促されて隣に座るも、目は雪男から離れない。

少し離れた所には朔と十六夜が居たが止める気配はなく、朧は膝の上で拳を握りしめていた。


「私・・・雪男があんなに戦えるとは思っていませんでした」


「先代も当代も実力主義です。ましてや留守の間に屋敷を守れる者は抜きん出て力のある者と決まっているのです。いわば爪を隠した獣ですよ」


銀も雪男も着物があちこち裂けて細かい傷も負っていた。

大きな負傷はなかったが、何にせよ戦いを止めずに眺めている朔と十六夜、そして訳は知らないが戦っているふたりに腹が立ち、朧がすくっと立ち上がる。


「雪男、お前に負けるわけにはいかんのだ。俺の真の力を刮目せよ」


銀の周囲に白い炎が立ち込める。

本性は九尾ーー過去に十六夜に戦いを挑み、百鬼たちを死に至らしめた真白き獣の姿に変貌しようとした時ーー


「やめなさい!」


三人の異なる声が重なり、男たちの動きが一斉に止まった。