主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

双方共に接近戦を得意とし、繰り広げる斬撃は目で捉えることができないほど速い。

打ち合う刀からは絶えず儚い音と水しぶきが飛び散り、銀は貝間に何度も幻を見ていた。


それも、若葉が人だった時に最期を看取った時の光景ーー



「思い出したくもないものを見せてくれるものだな」


「幻の内容までは俺には操れない。お前の心の傷が見えてるのならごめんな!」


押し合う力は互角ーー万力を込めて立ち向かうが、昨晩朧が手当てしてくれた左頬の傷が開いて血が流れ出る。


「息子を朧の婿に据えて立場を安泰にするつもりか?朧の心はどうする」


「俺の息子は朔に心酔しているから、傍に侍れるのならばどんな方法も厭わないだろうな。夜這い位はかけるかもしれん」


雪男が目と鼻の先の銀をぎらりと睨みつける。

急に力を緩めて身を翻し、着物の袖で銀の顔を叩いて視界を奪って離れると、僅かに銀の息が上がっていた。


「すぐに決着がつくと思っていたがなかなかにしぶとい。そんなに大切ならものにすればいいじゃないか」


「・・・簡単に言うなよ。俺だって葛藤してるし、制限されてることがある。とにかく決着つけようぜ。来いよ」


ーーいつの間にか周りには騒ぎを聞きつけた百鬼たちが集まり始めていた。

目見麗しい銀と雪男の対決には特に女の妖たちが黄色い声を上げてはやし立て、朔と十六夜はさも楽しそうに対決の様子を観戦している。


その時、朔の視界に小走りに駆けて来ようとする朧が入り、それを小さく首を振って止めた。

兄の言うことは従順に守る朧は足を止めて柱の陰に隠れる。


・・・何を巡ってふたりが争っているのか朧にはわかっていなかったが、昨晩よりも雪男の様は遥かに雄々しく美しい。


「・・・見ないで・・・」


女の妖たちの黄色い声が耳障りだった。


「・・・私の氷雨を・・・」


見ないで。