主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「なんでもって…本当になんでもか?」


「俺や父様がある程度の努力で手に入るものならなんでも、と付け加えておく」


ーーとどのつまりそれはほぼほぼ手に入るということ。

ぎらつく炎天下の中、大妖の銀を相手に勝てるわけがなかったが、やってみる価値はある。

「おい、雪男の目が滾っているじゃないか。朔、余計なことを言うなよ」


「ぎん、お前が負けたら…そうだな、若葉に膝枕でもしてもらおうかな」


…完全に嫌がらせ態勢に入った朔がさらに火をつけ、銀は刀を握り直して雪男に向けた。


「いくらお前たちが幼馴染みとはいえ、膝枕など許さん。そして百鬼の筆頭の座も渡さん」


「おいおい…!ちょ、主さま火に油を注ぐな!」


「ちなみに俺としてはどっちが勝っても負けても関係ない。美味い酒の肴になってくれ」


すうっと空気が動く気配と共に寒気が雪男を襲い、瞬時にしゃがむとその上を長刀が数本の髪と共に掠めていく。


ーー朔は約束を破ったりはしない。

このまま逃げ続けていると、炎天下では分が悪い。


朧を貰い受けたい、と言いたいがーー貰い受けたところで好き合わなければ意味がない。

ただ、今後朔の協力を得ることは可能だろうし、婿取りなどやめてほしい、と願い出ればきっと…


「考え事などしている場合か?」


刀を持った手をだらりと下げて不敵に微笑む銀は自信に溢れ、無邪気ににかっと笑う。


「俺はな、朔が豆粒以下の時から知っているんだ。生意気な十六夜と違って可愛がっている。だからな、朔に褒められたくてな!」


何の予備動作もなく振り下ろした刀を避けることができず、瞬時に顕現した愛刀の雪月花で受け止めると、氷が砕けるときのようなはかない音と飛沫が飛び散った。


「おお、相変わらず美しいな。俺の一撃を受け止めるとはさすがだ」


「…欲しいものがある。だからお前には負けてもらうぜ!」


雪男の目に青い炎が灯る。


ふたりの殺気に気付いて慌てて駆けてきた朧は、それを目撃して全身粟立っていた。