急速に気温が下がり、闇の中ーー雪男だけが泡白く発光する。
刀の周りには氷の結晶が生き物のように舞い、眼前の雨降らしは大きなひとつの目をとろんとさせていた。
「あの刀を見ると思考が停止して眠くなり、幻覚を見る。小物ならなおさら見たいものや見たくないものが見えているだろう」
万が一朧がまた襲われないように、朔が猫又に乗り込んで腰を抱くと、朧は朔にしがみついて目を輝かせた。
「雪男は…強いんですね?」
「ん、百鬼の誰よりも強いよ。あ、ぎんとは互角くらいかな」
雪男の背中は頼もしく、朧は体内を血が駆け巡っているのを感じながら身を乗り出す。
雪月花という刀ーー少し歪曲した曲線は美しく、雨降らしは眠気を抑えきれずその場にうずくまる。
「立てよ。俺もこの愛刀を振るわせたいからな」
「が……っ、うおお!」
見たいものと見たくないものを交互に見て錯乱状態に陥った雨降らしが突然立ち上がって鋭い爪を振りかざす。
ーーだがそれは雪男に向けられたものではなく、後方で見守っていた朧に再び向けられたのだと知った雪男は怒りに任せて雨降らしに向けて刀を振り下ろした。
血を噴いて倒れるものだとばかり思っていた朧は、肩口から斜めに斬られた傷が瞬時に凍り、それが全身に行き渡って氷漬けになると砕けて粉々になった雨降らしの少し爪がものすごい速さで向かってきたのを感じーー音も立てずに手に持っていた刀を鞘からすらりと抜いて立ち上がる。
まるで猫のような動作ーー
飛んできた爪に向けてニ、三度振ると、細切れになって地上へ落ちていく。
「おっ」
それを見た朔と雪男が同時に声を上げた。
その太刀筋は、父から教わり、身につけたものだった。
刀の周りには氷の結晶が生き物のように舞い、眼前の雨降らしは大きなひとつの目をとろんとさせていた。
「あの刀を見ると思考が停止して眠くなり、幻覚を見る。小物ならなおさら見たいものや見たくないものが見えているだろう」
万が一朧がまた襲われないように、朔が猫又に乗り込んで腰を抱くと、朧は朔にしがみついて目を輝かせた。
「雪男は…強いんですね?」
「ん、百鬼の誰よりも強いよ。あ、ぎんとは互角くらいかな」
雪男の背中は頼もしく、朧は体内を血が駆け巡っているのを感じながら身を乗り出す。
雪月花という刀ーー少し歪曲した曲線は美しく、雨降らしは眠気を抑えきれずその場にうずくまる。
「立てよ。俺もこの愛刀を振るわせたいからな」
「が……っ、うおお!」
見たいものと見たくないものを交互に見て錯乱状態に陥った雨降らしが突然立ち上がって鋭い爪を振りかざす。
ーーだがそれは雪男に向けられたものではなく、後方で見守っていた朧に再び向けられたのだと知った雪男は怒りに任せて雨降らしに向けて刀を振り下ろした。
血を噴いて倒れるものだとばかり思っていた朧は、肩口から斜めに斬られた傷が瞬時に凍り、それが全身に行き渡って氷漬けになると砕けて粉々になった雨降らしの少し爪がものすごい速さで向かってきたのを感じーー音も立てずに手に持っていた刀を鞘からすらりと抜いて立ち上がる。
まるで猫のような動作ーー
飛んできた爪に向けてニ、三度振ると、細切れになって地上へ落ちていく。
「おっ」
それを見た朔と雪男が同時に声を上げた。
その太刀筋は、父から教わり、身につけたものだった。

