主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

百鬼夜行とは古の時代より、人と妖の住む境界線を侵さぬように住み分けをするという契約の元、毎夜粛々と行われる。

代々の百鬼夜行の主のみがその真の意味を口伝で引き継ぐため、朔しか全ての全容は知らない。


朔を先頭に、古参の百鬼が脇を固め、その他が続くのだが、各地に配置されて散らばっている百鬼も居るため、様々な情報が寄せられていた。


「主さま、西にて雨の降り止まぬ土地があり、人々を困らせては一晩の宿を求めて家に上がり込んでは食ってしまう者が居るという噂が」


「わかった。じゃあ今夜は西だな」


百鬼夜行が空を行くーー


夜になると人々は戸を固く閉じ、外に出ることはない。

百鬼夜行に見つかっては食われてしまう…それは間違いなのだが人々はそれを信じて、夜は静寂に包まれる。

だが実際の百鬼は陽気であり、太鼓や笛を吹き鳴らす者が居たり、歌を唄ったりして、人々を困らせる妖が現れるまでは陽気そのものだ。


虎柄の猫又の背に乗った朧は、結構な速さで飛んでいるので振り落とされないように前に乗っている雪男の背中にしがみついていた。


「お、お師匠様!」


「なにー?!」


「お師匠様の!腰が!細い!です!」


「お前の方が!折れそうなほど!細い!っつーの!」


雪男には背中に朧の胸の感触が伝わり、朧は引き締まった雪男の身体に抱きついたりで顔が赤いのを見られずに済むことだけが救いで、強い風に声を大にして注意を促す。


「いつ敵が現れるかも分からないから気をつけろよ!」


「はい!」


焔がちらりと雪男たちを振り返る。

朔からの信に厚い雪男にちりちりと焼かれて尻尾を揺らした。