降って湧いたような殺気ーー
幽玄町は広いが、新手の妖が侵入してくれば、すぐに察知できるほど気を張り巡らせている。
その感じたことのない殺気に雪男は表情を強張らせて腰を浮かせたが、朔は落ち着き払って気色ばむ雪男を手で制した。
「な…誰だ!」
「まあ待て。俺の客人だ」
「はっ?何も聞いてねえけど!?」
つい乱暴な言葉遣いになった雪男は、何が起きているのか分からずに呆然と立ち尽くしている朧を無意識に背中に庇った。
「お前には報告したつもりだが」
「いやいやいや…聞いてな……え?まさか…」
どんどん何者かの気配が近付いて来る。
朔は手にしていた本を脇に置き、ひとつ深呼吸をして立ち上がった。
「懐かしいな」
「ああ、お前が代を継ぐ前に俺たちは出て行ったからな」
玄関から脇に回って庭を通ってやってきたその人影ーー
真っ白な長い髪に頭部に耳がふたつ…
ふかふかの尻尾は左右に揺れ、にくたらしい笑みを浮かべた背の高い男…その名はーー
「銀(しろがね)!?」
「おお雪男か。久しいがお前も見てくれは変わっていないな」
遠慮なくずけずけと歩み寄っては馴れ馴れしく朔の肩を抱き、雪男の背中に隠れていた朧を見つけると、目を丸くした。
「ほう…お前が十六夜の末の娘か。ふむ…ほら、こちらへおいで」
美しい白狐の男に手招きをされた朧がふらふらと背中から出てきてきたので雪男が手を引こうとすると、朔が目配せをして止めた。
「ああ、これはいい女だ。息吹の娘ならば当然か」
「母様を知っているんですか?」
「もちろんだとも、息吹とは深い仲でな」
「おい銀、嘘つくなよお前!」
「嘘じゃない。…もういいか、来い」
銀が玄関の方に声をかけると、同じように裏道を通ってくる気配。
雪男が息を詰めるとーー朔がふんわりと笑った。
「…久しぶり、朔ちゃん」
「うん、若葉」
朧は見たことのない女の登場に、雪男の袖を握って口をぽかんと開けた。
幽玄町は広いが、新手の妖が侵入してくれば、すぐに察知できるほど気を張り巡らせている。
その感じたことのない殺気に雪男は表情を強張らせて腰を浮かせたが、朔は落ち着き払って気色ばむ雪男を手で制した。
「な…誰だ!」
「まあ待て。俺の客人だ」
「はっ?何も聞いてねえけど!?」
つい乱暴な言葉遣いになった雪男は、何が起きているのか分からずに呆然と立ち尽くしている朧を無意識に背中に庇った。
「お前には報告したつもりだが」
「いやいやいや…聞いてな……え?まさか…」
どんどん何者かの気配が近付いて来る。
朔は手にしていた本を脇に置き、ひとつ深呼吸をして立ち上がった。
「懐かしいな」
「ああ、お前が代を継ぐ前に俺たちは出て行ったからな」
玄関から脇に回って庭を通ってやってきたその人影ーー
真っ白な長い髪に頭部に耳がふたつ…
ふかふかの尻尾は左右に揺れ、にくたらしい笑みを浮かべた背の高い男…その名はーー
「銀(しろがね)!?」
「おお雪男か。久しいがお前も見てくれは変わっていないな」
遠慮なくずけずけと歩み寄っては馴れ馴れしく朔の肩を抱き、雪男の背中に隠れていた朧を見つけると、目を丸くした。
「ほう…お前が十六夜の末の娘か。ふむ…ほら、こちらへおいで」
美しい白狐の男に手招きをされた朧がふらふらと背中から出てきてきたので雪男が手を引こうとすると、朔が目配せをして止めた。
「ああ、これはいい女だ。息吹の娘ならば当然か」
「母様を知っているんですか?」
「もちろんだとも、息吹とは深い仲でな」
「おい銀、嘘つくなよお前!」
「嘘じゃない。…もういいか、来い」
銀が玄関の方に声をかけると、同じように裏道を通ってくる気配。
雪男が息を詰めるとーー朔がふんわりと笑った。
「…久しぶり、朔ちゃん」
「うん、若葉」
朧は見たことのない女の登場に、雪男の袖を握って口をぽかんと開けた。

