ある程度自分が朧を意識していると分かったならばーー実は積極性の高い雪男はその気持ちを隠すのはやめようと思い、目下巨大な壁となっている朔と対峙していた。
寝起き後風呂に入り、身支度を整えた頃合いを狙って部屋の前で待ちかまえていると、突然無邪気な子供のように朔が笑う。
「ははっ」
「な、なんだよ・・・」
「分かりやすい奴だなと思って。話なら聞く」
見透かされて釈然とせずむくれていると、庭に降りた朔が蔵の方へ歩き出す。
そこは朧でも出入りを禁じられている場所なので内密の話をするにはうってつけだった。
「母様に会いに行ったそうだな」
「・・・今朝のことなんだけどもう耳に入ってんのかよ」
「あいにく地獄耳なんだ。で、どうした」
当主にしか持つことを許されていない鍵で中に入り、埃が立ち込める薄暗い室内で互いに向き合い、変な汗が背中を伝う雪男が切り出す。
「朧のことが好きなんだと思う」
「・・・」
「気付いたからには主さまには言わなきゃと思ってさ。主さまの母親とかその子供に好意を持つなんて・・・ほんと申し訳ない」
「女として好きなのか?」
「へ?」
「朧と床を共にしたいとか、言ってしまえば抱きたいということか?」
ーー朧は朔の妹であり、溺愛の存在。
忘れてはいないが、そう問われるとそれを想像して耳まで真っ赤になった雪男はじっと見つめてくる朔の視線を遮るようにして腕を縦にして顔を隠す。
「・・・多分・・・」
「無理にその願いを遂げればお前は溶けて死に、朧は凍って死ぬ。どうするつもりだ」
「・・・大切にしたい。時間をかけて同じ気持ちになれたら、と思ってる。あいつが俺のこと好きになってくれたら・・・添い遂げたい」
「・・・ふうん」
朔の低い声の相槌に背筋が伸びた雪男はこの時朔に殴られたり罵倒される覚悟をしていたが、朔は何もせずにただ微笑し、逆に雪男を戦慄させていた。
「あ、あの・・・主さま?」
「お前の想いは分かったがすまないな、一歩遅かったようだ。一手を投じてしまったからお前が何とかしてみせろ。そしたら認めてやらなくもない」
「一手・・・?」
をの一手はなんとも驚愕な一手だった。
寝起き後風呂に入り、身支度を整えた頃合いを狙って部屋の前で待ちかまえていると、突然無邪気な子供のように朔が笑う。
「ははっ」
「な、なんだよ・・・」
「分かりやすい奴だなと思って。話なら聞く」
見透かされて釈然とせずむくれていると、庭に降りた朔が蔵の方へ歩き出す。
そこは朧でも出入りを禁じられている場所なので内密の話をするにはうってつけだった。
「母様に会いに行ったそうだな」
「・・・今朝のことなんだけどもう耳に入ってんのかよ」
「あいにく地獄耳なんだ。で、どうした」
当主にしか持つことを許されていない鍵で中に入り、埃が立ち込める薄暗い室内で互いに向き合い、変な汗が背中を伝う雪男が切り出す。
「朧のことが好きなんだと思う」
「・・・」
「気付いたからには主さまには言わなきゃと思ってさ。主さまの母親とかその子供に好意を持つなんて・・・ほんと申し訳ない」
「女として好きなのか?」
「へ?」
「朧と床を共にしたいとか、言ってしまえば抱きたいということか?」
ーー朧は朔の妹であり、溺愛の存在。
忘れてはいないが、そう問われるとそれを想像して耳まで真っ赤になった雪男はじっと見つめてくる朔の視線を遮るようにして腕を縦にして顔を隠す。
「・・・多分・・・」
「無理にその願いを遂げればお前は溶けて死に、朧は凍って死ぬ。どうするつもりだ」
「・・・大切にしたい。時間をかけて同じ気持ちになれたら、と思ってる。あいつが俺のこと好きになってくれたら・・・添い遂げたい」
「・・・ふうん」
朔の低い声の相槌に背筋が伸びた雪男はこの時朔に殴られたり罵倒される覚悟をしていたが、朔は何もせずにただ微笑し、逆に雪男を戦慄させていた。
「あ、あの・・・主さま?」
「お前の想いは分かったがすまないな、一歩遅かったようだ。一手を投じてしまったからお前が何とかしてみせろ。そしたら認めてやらなくもない」
「一手・・・?」
をの一手はなんとも驚愕な一手だった。

