主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「白雷ってあんなませ餓鬼だったか?いやらしい抱きつき方しやがって」


「長年想い続けた挙げ句長年手のひとつも出せずに終わった奴よりいいだろ」


「・・・終わってねえし」


揶揄されて畳の上にばたんと倒れ込んだ雪男は、机に向かって何やら文を書いている朔の横顔を見つめる。

息吹にも似ているし、先代にも似ている不思議で端正な顔立ちのこの男が生まれてどの位経っただろうかと思い立って頬杖をついて穴が空くほど見つめ続けた。


「主さまっていくつになるっけ?」


「さあ。お前こそいくつになる?」


「さ、さあ・・・」


妖は人ほど歳を気にしない者が多く、朔たちも例外ではなかった。

ふたりとも嫁も持たずに周りから嫁取りを勧められてはうんざりしていたのだが、女の場合は早めに嫁に出すのが通例。


「主さま、嫁さんはまだか?」


「お前こそどうなんだ?」


「質問に質問を返すなよな・・・」


「一度も嫁を取らずに一生過ごすのか?」


「好きな女が居るから嫁さんを取らないだけだし。主さまだって・・・」


「俺は家督を継いだからいずれ嫁は取る。母様に惚れる前はそれなりに遊んでいたと父様に聞いたぞ」


・・・なんてことを息子に吹き込んだんだ、と驚愕して雪男が身体を起こすと、朔がようやく筆を止めてにっこり笑いかけた。


「雪女とは火遊びしても溶けないらしいな。選りすぐりを呼び寄せてやろうか?」


「余計なお世話だっつうの」


男同士の雑談に部屋の外に隠れて聞き耳を立てていた朧は新事実を聞いて驚いていた。


「雪女とは・・・溶けない・・・」