主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

百鬼夜行とは、意味もなく人に害を与える妖を制裁して均衡を保つことを目的に毎夜行われる。

古くから行われているので朔も先代の十六夜もそれを疑問に感じたことがない。

ただ違うのは、鬼八の怨念を鎮めなくてもよくなったということだ。


「朧は?」


「さっき横になったから起こすなよ。昨晩はどうだった?」


「上々だ。これからはさらに上々になる」


「は?どういう意味・・・」


帰ってきた朔はそれだけを言い残して風呂に向かい、いらいらしながら戻ってくるのを待っていると、居間には来ずにそのまま自室に入って寝てしまった。


また放置を食らった雪男がさらにいらいらして庭に目を遣ると、いつの間にか朧が庭に降りて足元にじゃれつく猫又を見下ろしていた。

少しはだけた胸元が妙に艶めかしく、濃紺の羽織を肩にかけてやりながら注意を促す。


「はだけてるぞ。ちゃんと着ろ」


「はい。兄様は?」


「寝てる。お前さあ、百鬼夜行に同行するのって本気?」


「どうしてですか?」


「息吹は連れていけなかったけど朧なら大丈夫にゃ。僕に乗って!」


「こらお前、盛った声出すんじゃねえ!」


猫又の頭を結構な力でごんと叩いた雪男は、じっと答えを待っている朧の目の中に映り込んでいる自分自身に問いかけるようにして、本音をぶつける。


「お前が心配なんだ」


「ご師事頂いたおかげで力は持っています。私はひとりでも大丈夫」


ーーそう言われても納得がいかずに睨み合う。

嵐はすぐそこまでやって来ていた。