主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

文のやりとりはずっと続けていたが、朧が顔を出しに来たことはなかった。


寧ろ朧からの返事は数通に一通で、何だか自分が焦がれて頻繁に文を書いているようで釈然としない気持ちになることも多かったが・・・



「・・・本当に朧なのか・・・?」


縁側に座って楽しそうにしている兄妹を庭で箒を持って仕事をしている風に見せかけながら観察する雪男。

・・・うっすら化粧をしているし、数年前には想像できないほど綺麗になった朧が来ていることを聞きつけた百鬼たちが集まると、あちらこちらから生唾を飲む音が聞こえた。


「これはたまらん。美しくなりおって」


「俺、踏まれたい」


「俺も命令されたい」


下衆で野蛮な声が上がるが、妖とは本来正直で力を持つ者に無条件で惹かれるもの。

以前朔は朧が次代の百鬼夜行の主にしてもいいと言っていたが、あの時は鼻で笑っていたが、今はそれも悪くないと思えるほどに朧は吸引力を持っている。


まず美しさが絶対条件。

美しさはすなわち力を持っている者の証なのだ。

なので妖は最も心技体が充実している時に成長が止まり、衰えていく毎に老いる。


「こら、主さまの耳に入ると殺されるぞ」


「だがそう言っても美しすぎる。あれでは引く手数多で殺傷沙汰になりそうだな」


「主さまが居るから問題ないだろ。俺も目付役なんだからあいつに手なんか出すと容赦しないからな」


そう、目付役。

朧が嫁に行くまでは目付役として見守らなければならない。


ーー何故か自分にそう言い聞かせていることに動揺しつつ、雪男は群がる百鬼たちを箒で追い払い続けた。