主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

秋の深まった夜、晴明と山姫の間に男子が誕生した。

その知らせを聞いた朧は珍しく飛び跳ねて喜び、産後しばらくして赤子を腕に抱いた山姫を出迎えて一緒に待っていた息吹と手を取り合って眠っている赤子に見入る。


「わあ、可愛いっ。母様、この子・・・父様にそっくり!」


「そうだねえ、この耳とか尻尾とかね」


晴明は人と九尾だった白狐の間に生まれた半妖であり、人の世界に居生きると決めてから意図的に耳と尻尾を術で隠していた。

朧もそうだが赤子の時は額に角があり、成長するにつれ引っ込んだり術で隠したりするようになる。

目の前の赤子は真っ白でふさふさの耳があり、息吹の鼻息が荒くなっていた。


「母様おめでとうっ」


「ありがとうねえ。まさかあたしが子を生むなんて」


息吹にとって山姫は育ての親であり、母様と呼ぶことに朧も何ら抵抗はない。

ただただ何もかも真っ白な赤子に見入り、小さな紅葉のような手に人差し指を近付けるとぎゅうっと握ってきて胸がきゅんっと鳴った。


「お世話したかったから残念」


「寂しくなるけどたまには遊びにおいでよ」


蚊帳の外にいた朔と雪男だったがその会話が耳に入ると雪男が驚いて朔を凝視する。


「え?朧・・・どこかに行くのか?」


「実家に帰る。元々山姫が子を生むまでの約束だったからな」


「そ、そうか。ふうん・・・」


ーーまさに予想外。

ずっとこの屋敷に住むものだと思っていたこと自体に一番驚いていたのは雪男だった。