主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

久々に母娘は一緒に風呂に入った。

この前まで童だったはずの娘は鍛錬のせいか落ち着き払い、どちらかといえば自分に似ていたのに今は父親似といってもいい。


「朔ちゃんと雪ちゃん厳しくない?泣いたりしてない?」


「ううん全然。最近教えることがなくなったって言われるよ」


「朧ちゃん優秀なんだね。父様の力を継いでるからかな。でも女の子だから強くならなくてもいいんだよ」


「兄様のために命を懸けてる女の妖も沢山居るんだよ。私もあんな風になりたいな」


百鬼夜行に兄弟が加わった前例はない。

何故かと言われるとーー大体一子しか設けてこなかったからだ。

朧の兄弟たちは各地に散らばり、各々が家業のために動いている。


「ねえ母様・・・雪男って女の人と付き合ったこととかあるのかな」


「うーん・・・そんな込み入った話したことないんだけど、でも長く生きてるからどうかな」


「そうだよね・・・あんなにかっこいいんだもん、あるよね」


いつの間にか腰まで伸びた長い髪を洗ってやり、湯船に浸かった息吹はふふっと笑って朧を引き入れる。


「雪ちゃん押しに弱そうだから迫りまくってみたらどうかな」


「名前を呼んでみたいの」


妖の真実の名は大きな意味を持つ。

皆が種族名かあだ名を名乗り、滅多にその名を明かすことはなく、また知られたとしても暗黙の了解でその名を呼ぶ者はない。


「朧ちゃんがもう少し大きくなったらきっと教えてもらえるよ」


「うん」


安心したように少し微笑んだ娘の顔から少し視線を下げた息吹が叫んだ。


「朧ちゃんったら私より胸も大きくなってる!」