夏が終わりかけた頃、朧は生家に顔を出した。
生まれは父たちが別邸と呼んでいるこの家で、戸の前に立ってもじもじしていると、気配を感じたのか父の十六夜が出迎えに現れた。
「よく帰って来たな」
「父様、ただいま」
自分が生まれた頃はもう父は引退して悠々自適の生活。
父を頼って妖の来訪は頻繁にあったが、それは朧にとって大小様々な妖を見ることができたので楽しみのひとつでもあった。
「息吹、朧が戻った」
「朧ちゃん!」
母が化粧道具を届けに来てくれてから随分経ったが、その分朧も心身共に成長していた。
背が伸び、顔立ちがどちらかといえば十六夜に似て陰のある印象を持ち、人よりも鬼の血が強いのかーー成長が速い。
両親に出迎えられて気恥ずかしいのか、上がらずに固まっている朧の手を引っ張って中へ引き入れた息吹は心底嬉しくなって娘に抱きつく。
「やだ朧ちゃん、私より背が高くなってる!」
「お前は小さな頃から小さかったからな」
「やだもう主さまったら!」
時々癖で“主さま”と呼んでしまう母が可愛らしく、屋敷で作ってきた饅頭の入った風呂敷を父に手渡した朧は、静かに見下ろしている父に頭を下げた。
「あの、お願いがあって・・・」
「・・・まずはゆっくりしろ。泊まっていけるのか?」
「うん」
「久々に会ったんだ、焦ることはない」
滅多に笑わない父に微笑みかけられて嬉しくなった朧は、父の着物の袖を握って腕に抱きついた。
生まれは父たちが別邸と呼んでいるこの家で、戸の前に立ってもじもじしていると、気配を感じたのか父の十六夜が出迎えに現れた。
「よく帰って来たな」
「父様、ただいま」
自分が生まれた頃はもう父は引退して悠々自適の生活。
父を頼って妖の来訪は頻繁にあったが、それは朧にとって大小様々な妖を見ることができたので楽しみのひとつでもあった。
「息吹、朧が戻った」
「朧ちゃん!」
母が化粧道具を届けに来てくれてから随分経ったが、その分朧も心身共に成長していた。
背が伸び、顔立ちがどちらかといえば十六夜に似て陰のある印象を持ち、人よりも鬼の血が強いのかーー成長が速い。
両親に出迎えられて気恥ずかしいのか、上がらずに固まっている朧の手を引っ張って中へ引き入れた息吹は心底嬉しくなって娘に抱きつく。
「やだ朧ちゃん、私より背が高くなってる!」
「お前は小さな頃から小さかったからな」
「やだもう主さまったら!」
時々癖で“主さま”と呼んでしまう母が可愛らしく、屋敷で作ってきた饅頭の入った風呂敷を父に手渡した朧は、静かに見下ろしている父に頭を下げた。
「あの、お願いがあって・・・」
「・・・まずはゆっくりしろ。泊まっていけるのか?」
「うん」
「久々に会ったんだ、焦ることはない」
滅多に笑わない父に微笑みかけられて嬉しくなった朧は、父の着物の袖を握って腕に抱きついた。

