主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

天叢雲は古より存在していた。

血を吸うと劇的な力を発揮し、使い手の願いを叶える。

ただ使い手を欺いて命を脅かすこともあり、故に先代も朔も血を与えたことはなく、朧が天叢雲で遊んでいる時は頻繁に血をねだっていた。


『血をくれ。お前の血は美味そうだ』


「また兄様に怒られるよ」


『俺はお前は次代の百鬼夜行の主になれると思うぞ。さすれば俺はお前の物になってやらなくもない』


ーー一子相伝なので、次の百鬼夜行の主は恐らく朔の子となる。

振り回していた天叢雲を鞘に戻した朧は、庭の池の水面に映る自身を見下ろしながら首を傾げた。


「私って強そう?」


『強い者は美しい姿をしているものだ。お前はもっと美しくなる。俺に血を与えれば力になってやろう』


「朧、騙されるな。そいつに命を吸われてしまうぞ」


ひんやりとした冷えた手が朧の細い肩を力強く抱き、天叢雲は雪男に乱暴に掴まれて縁側に放り投げられた。


「お師匠様、痛い・・・」


「天叢雲は欺いたり惑わせたりして扱いが難しいから封印されてたんだ。朧、あいつの話に耳を貸すんじゃないぞ。心配させるなって。な?」


「・・・はい。気をつけながら遊びます」


「やめてくれって言ってんのにお前は・・・」


白い手が朧の髪をくしゃりとかき混ぜる。

完全に子供扱いだったが、雪男の力強い手に朧の小さな胸は張り裂けんばかりに高鳴っていた。