主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

時々面白い光景にも出くわすことがある。


代々百鬼夜行を率いる者が住む屋敷には、主さまこと朔の身辺警護と身の回りの世話をする極めて少数の者が住み、先代の代から山姫と雪男が常駐していた。

ひとりで貝合わせをしていると、自分しか居ないのに横から小さな手が出てきて参加してきたりーーそれはとても稀にしか現れない座敷童なのだと朔から聞いた。


そして鬼族は冷えた者か情熱的な者に二分され、顔を覆ってしまうような光景に遭遇することもある。


「兄様、これどこに置けば・・・あっ」


思わず柱の影に隠れてしまった理由は・・・朔が襲われていたからだ。


あまりにも焦がれて限界に達した鬼族の美女が朔の膝に乗り、今まさに押し倒されてしまっており、朧はすかさず懐から帳面を出して観察する気満々。


「ここからじゃ何を話してるのか聞こえない・・・」


「この出歯亀め、何やってんだよ」


「あ、お師匠様・・・」


朧がお尻を振りながら覗きをしているのを見つけた雪男は腰を落として朧を座らせた。


「主さまやるじゃん」


「違います兄様が押し倒されたんです」


ふたりして息を殺して観察していると、鼻息荒い女に朔が何事かごにょりと囁いた。

途端に女は朔から飛び退ると、顔を真っ赤にして飛び出て行った。


「おおおー、何言ったんだよすげえ気になる!」


押し倒された体の朔は、何事もなかったかのように起き上がると、気配を感じていたのか朧と雪男に向けてひらひら手を振る。


「さすが兄様・・・素敵」


「女たらしなのは先代譲りだな・・・行く末が恐ろしいぜ」


帳面に殴り書きをしている朧の手はしばらく止まらなかった。