主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「ところでお前、まだ妻を迎えないのか」


「ああそういえば名酒が手に入ったんです。取って来ま・・・」


「今日ははぐらかされないぞ。寵愛している女は居ないのか」


腰を上げかけた朔は、今日の来訪の理由はこれなんだなと気付いてまた腰を下ろすと、小さく息をついた。


「父様は母様と出会うまで何年・・・何十年・・・何百年かかりました?」


「・・・それは・・・」


「俺はまだなんです。まだ時が満ちてない。まだ出会えてないんです。そう考えると朧は幸運でしょう。早婚でも怒らないでやって下さいね」


憂いに満ちた微笑みで庭を眺めている朔をどれほど説得しようとも無駄だと悟った十六夜は、文の束を抱えて廊下を歩いていた朧と目が合うなり猛然と駆けて来られて若干引いていた。


「げ、元気そうだな」


「父様だ!父様っ、会いに来てくれたの?」


「ああ、まあな。・・・少し背が伸びたか?」


「はいっ。兄様位に大きくなりたいの!」


「・・・それは大きくなりすぎだ」


「兄様、今日も沢山恋文が届いてました」


十六夜がその多さに驚き、朔はそれを受け取って脇に置いてしまった。


「読まないの?」


「礼儀だから読むけど、後でね。朧、お前にも直に沢山届くようになるよ」


鬼の成長は速い。

朧の手足は日々長くなり、日々美しくなっていた。