主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

朔はよく縁側で読書をする。

祖父の安倍晴明の影響で幼い頃から本を読み、博識を深めてはよく分からない議論を晴明としている姿をよく見る。

もう嫁を迎えていいはずなのに独り身なので、特に鬼の種族の女たちが毎日庭に佇んではその視界に入ろうと躍起になっている。


朧は美しく着飾り、化粧を施し、指先にまで神経を使っているそんな女たちをずっと観察していた。

どうすればきれいに見えるのか、女らしい仕草に見えるのか、日々研究だ。


「朧、この本読んでみるといい。すごく面白いから」


「はい」


「今は兄と妹の関係でいい。お前はよくやっているし、たまには息抜きしないとね」


「うんっ。兄様、一緒にお団子食べよ」


それまで背筋を正して朔の傍に座っていた朧が久々に笑顔になり、ずけずけと朔の膝に上がり込んで団子を差し出す。


「はい、あーん」


「ん、美味い。今日は夕飯も一緒に食おう。鬱憤も溜まっているだろうからお前のわがままに付き合ってやる」


「ほんとっ?兄様大好き!」


・・・実は兄妹のじゃれ合いも密かに朔目当ての女たちにはたまらない光景のひとつだ。

花が開くように笑う朔に腰が砕けてしまう女たちを見ながら団子を頬張っている朧も大物だが・・・


「朧ー、どこに・・・」


広い屋敷内を雪男が探し回っていると、縁側でふたりが笑い合っている姿があった。

ここへ来てから笑いかけてきたこともないのにーーそう思うと不思議と少し腹が立つ。

それもこれも、朧が自分に惚れていると思っていたから。


「俺の勘違いか?」


あの笑顔が似合っているのに、見せてくれなくなった。

それが残念で、兄妹に背を向けた。