主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

元から素質はあった。

集中力があり、気の流れを読んで風を起こすこともできるし、この幼さで鬼火を操ることもできる。


”鬼のように美しい“という比喩があるが、それはあながち間違いではない。

女は魂が抜かれるほど美しくなり、男は屈強もしくは優美な出で立ちになり、人を魅了して食ってしまうのだ。

朧もその素質が十分あったが、鬼と人の間に生まれた半妖であることから、成長しても人を食うことはないだろう、という結論に落ち着いている。


「そうそう、掌に目があると思い込めばそこに力が集まる。そう、それだ」


研ぎ澄まされたように集中した朧の小さな掌から火球が生まれて雪男の髪をかすめて飛んでゆく。

少し原理を教えただけでそれをやってのける才能に感嘆した雪男は、初日から力を発揮する朧に笑いかけた。


「まあさ、基本日中は主さま居るし、その間は油断してても大丈夫だ。瞑想したり掃除したり、自分磨きする時間はたっぷりある。焦らなくてもいいからな」


「はい」


・・・すっかり落ち着いた子になってしまったが、それもきっと三日坊主だろうと高をくくる。


ーーだが、それは三日経っても、一週間経っても続き、軽口を叩かずに修行に勤しむ朧のことを雪男はだんだん心配し始めた。


「朧、そろそろ飯の時間・・・寝てるのか」


朔が朧に与えた部屋へ呼びに行くと朧が座布団を枕に寝ていた。

傍に座った雪男は、両親によく似たさらさらの黒髪を撫でてぽつりと囁く。


「焦って大人になるなよ。・・・心配するだろ」


朧にか。

自分に、か。