主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

朔に言われたことは必ず守らなくてはいけない。


ーー半ば脅迫観念に近い思いを抱いているのは、朔が父よりも多くの百鬼を抱え、心底から慕われているからだ。

父は愛想がなく、百鬼たちと戯れることはほとんどなかったと聞いているし、またそれは真実だろうとも思う。

逆に朔は百鬼たちと戯れることも多く、相談や助言をしている姿をよく見る。

あんな風になりたい、と憧れの存在でもある自慢の兄だ。


「好きって言っちゃいけない・・・今までと一緒じゃない・・・」


じゃあ、どうすれば?


ひとり湯船に浸かりながら深く考えていると、とある夫婦の姿が脳裏に浮かんだ。


いつも笑っていて、父の短気にも怒ることのない母。

時にはあの父を叱り、喧嘩をしては必ず父から謝らせる母。

・・・偉大だ。

そのくせ女性の鑑のように、三歩下がって男を立てるーーそう、あんな母のような人に・・・


「そうすれば、好きになってもらえる・・・?」


・・・それでは駄目だ。

自分を通して母を見ることなんて、許さない。


「見習うとこだけ見習って、後は自分らしく・・・」


小さな蕾の花が少しずつ、開き始める。

その花を咲かせるのは果たしてーー?