主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

主さまは、本気で道長が息吹に惚れていると思い込んでいた。


道長が屋敷へ来ると、決まって仏頂面になる。

元々表情が乏しい方なので、それを見るのは晴明にとって最早楽しみのひとつだった。


「あいつ…また来たのか」


「道長のことかな?それはそうだろう、息吹に夢中なのだから」


「…人のくせに」


「息吹は人に嫁がせる。道長はたいそうな優良物件だよ」


主さまの表情がまた渋くなる。

姿を現している時は息吹が自室に居るか、眠っているかのどちらかだ。

今は自室で巻物に夢中になっている時で、主さまは先程屋敷を後にした道長を野次っていた。


「そもそも人のくせに、と言うが、私が妖に嫁がせるとでも思っていたのか?例えばそなたとか?」


「俺を巻き込むな」


「巻き込まれたくなければ、余計な詮索はせぬ方が良い。道長は立派な御仁。位も高く、人格もできている。そなたとは真逆…これは失礼」


ーー主さまとて慕う者は沢山居る。

だが百鬼夜行に加えてもらうには条件があまりにも難しく、また意味もなく人を食ってもならない。

何十年も何百年も、人を食わずに居られるのは、妖の中でもごくごく僅かしか存在しない。


「…俺には百鬼が居る」


「そうだな、だが多数が先代の潭月様から引き継いだのだろう?減りもしなければ、増えることもない」


百鬼は、一匹で一騎当千以上の強さを持つ。

多ければ多いほど主としての強さが証明され、敬われるのだ。


「…お前と話していると面白くない」


「奇特だな、私もそなたと話していてひとつとして楽しくはないからねえ」


わざと語尾を伸ばすと、舌打ちする主さまの様子に内心爆笑の晴明。


棚に巻物を戻しつつ、頭をがりがり掻いて苛立っている主さまに忠告をした。


「道長は、人と妖の間に在る私の存在を理解してくれる唯一の友人。道長に手を出すと…そなたとて容赦はせぬぞ」


「ふん、妖も斬れん男なんぞに手を挙げるわけがない」


「それを聞いて安心したよ。さあ、そろそろ息吹が部屋から出て来る。姿を消してもらおうか」


主さまを顎で扱う晴明。

本来ならば、主さまほどの妖が素直に従うことはないが、息吹が関われば別問題。


今晴明は、全てを統べている。