主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

晴明は、主さまと息吹を決して二人きりにはさせない。

四方八方から式神を使って監視を立て、その晩に報告を受ける。

最強の稀代の陰陽師ともなれば、主さまをも騙せることができる。

もしかしたら監視に気付くこともあるかもしれないが、それは特に重要ではない。


自分は父親なのだから、何が悪いんだ?と言ってやればいいのだ。


「そうか、鈴を」


「はい。言葉は交わしておりませんが、鈴を鳴らして是非を交わしておられます」


「わかった」


式神から報告を受けた後、眠っている息吹の寝顔を見てから就寝。

そして翌朝になれば、百鬼夜行明けで寝ていないはずの主さまが早速やって来ている。


「十六夜。張り切りすぎなのでは?」


「これ位どうということはない」


ただ単に息吹に早く会いたいのだろう?

そう心で思っていたはずなのだが、どうやら表情に出たらしくーー主さまは渋面になってふいっと顔を逸らした。


「…約束通りに話もせずやっている。勘繰るな」


「勘繰りなどしていないとも。まさか妖の頂点に立つ者が、あのような幼き女子に惚れることなど天と地が逆になったとしても有り得ぬだろうからな」


ーー主さまの渋面顔がさらに険しくなる。

これは最高に面白い玩具だ、と思ってしまった晴明は、咳払いをひとつして庭の花を指した。


「美しいだろう。何せうちの可愛い息吹が育てた花だからねえ」


「…親馬鹿が」


「そなたも親代わりだったろう?おや?違うのか?違う感情があるのかな?」


ついには殺気を飛ばされたので、からかうのをやめて優雅に扇子で顔を仰ぎながら、空を見上げた。


「帝の様子はどうだ」


「盆暗だな」


「そうだろうとも。なんとしても息吹を諦めさせなくてはならぬ。頼んだぞ」


「言われずとも…」


しまった、というような顔をした主さまに、噴き出しそうになる晴明。


主さまの一挙手一投足に興味津々だったが、息吹は絶対にこの女たらしにはやらぬ、と固く心に決めながら、扇子で口元を隠しながら、にやにやしていた。