まず手始めに、触ってはいけないもの、入ってはいけない場所を教えた。
陰陽師という職柄上、危険はつきもの。
呪い返しなどされるへまをしたことはいが、自分はともかく息吹に被害がいくのが最も避けなくてはならないことだ。
「私の仕事は陰陽師という。星を読み、占術や祭祀を行って悪しきものを遠ざける生業の者なんだ」
「じゃあみんなを助けてるってこと?」
「そうだよ。中には逆に悪いことをしようとする者が居る。それらには手は貸さない。私は半妖だが、人として生きることを選んだ以上、人々の手助けとならなければね」
丁寧に教えてやると、二度は聞いてこない。
息吹が聡明であることに、晴明はつい饒舌になって聞いてもこないことまで教えてしまう。
「私は何かお手伝いできるの?」
「もう少し大きくなればね。それまでは巻物などを棚に戻したりしてくれると助かるかな」
「じっとしてるのは苦手だから、晴明しゃまの式神さんたちにお掃除やお料理を教えてもらってもいい?」
ーーきちんと正座をして最後まで話を聞き、そして問うてくる息吹。
我儘な相手ばかりと対峙している晴明にとっては息吹のはつらつさと、自分の手伝いをしてくれようとする姿勢に身を乗り出して頭を撫でてやった。
「徐々に覚えていけばいいんだよ。あと…」
息吹に“父”と呼んでほしいーー
常に自信たっぷりな晴明だが、これだけは何故かきちんと伝えることができないでいた。
いわゆる狐顔の秀麗眉目で中性的な晴明は、それをごにょりとようやく口にした。
「私のことは、父と思ってほしい。実の父ではないけれど、そなたのことはもう実の娘だと思っている。だから…」
「父しゃま」
何の躊躇もなく、ひとつ頷いて晴明にそう言った息吹は、何の疑問も抱いてはいなかった。
この人は、唯一無二の人となる。
恩人であり、さらに父として傍に居てくれようとしているのだから、当然のことだ。
「少々勇気が要ったのだが…案外簡単だったねえ」
「何で?私の父しゃま…えへ」
照れては畳を指で突き回していた息吹は、背筋を正して晴明の手を握った。
「主しゃまは父しゃまじゃなかったの。そんなんじゃなかったの。でも目の前に居る人は私の父しゃまだって思えるの。私の父しゃま…嬉しいっ!」
その数倍ーいや、想像を超える喜びを得たのは、息吹にではなく…晴明の方だった。
陰陽師という職柄上、危険はつきもの。
呪い返しなどされるへまをしたことはいが、自分はともかく息吹に被害がいくのが最も避けなくてはならないことだ。
「私の仕事は陰陽師という。星を読み、占術や祭祀を行って悪しきものを遠ざける生業の者なんだ」
「じゃあみんなを助けてるってこと?」
「そうだよ。中には逆に悪いことをしようとする者が居る。それらには手は貸さない。私は半妖だが、人として生きることを選んだ以上、人々の手助けとならなければね」
丁寧に教えてやると、二度は聞いてこない。
息吹が聡明であることに、晴明はつい饒舌になって聞いてもこないことまで教えてしまう。
「私は何かお手伝いできるの?」
「もう少し大きくなればね。それまでは巻物などを棚に戻したりしてくれると助かるかな」
「じっとしてるのは苦手だから、晴明しゃまの式神さんたちにお掃除やお料理を教えてもらってもいい?」
ーーきちんと正座をして最後まで話を聞き、そして問うてくる息吹。
我儘な相手ばかりと対峙している晴明にとっては息吹のはつらつさと、自分の手伝いをしてくれようとする姿勢に身を乗り出して頭を撫でてやった。
「徐々に覚えていけばいいんだよ。あと…」
息吹に“父”と呼んでほしいーー
常に自信たっぷりな晴明だが、これだけは何故かきちんと伝えることができないでいた。
いわゆる狐顔の秀麗眉目で中性的な晴明は、それをごにょりとようやく口にした。
「私のことは、父と思ってほしい。実の父ではないけれど、そなたのことはもう実の娘だと思っている。だから…」
「父しゃま」
何の躊躇もなく、ひとつ頷いて晴明にそう言った息吹は、何の疑問も抱いてはいなかった。
この人は、唯一無二の人となる。
恩人であり、さらに父として傍に居てくれようとしているのだから、当然のことだ。
「少々勇気が要ったのだが…案外簡単だったねえ」
「何で?私の父しゃま…えへ」
照れては畳を指で突き回していた息吹は、背筋を正して晴明の手を握った。
「主しゃまは父しゃまじゃなかったの。そんなんじゃなかったの。でも目の前に居る人は私の父しゃまだって思えるの。私の父しゃま…嬉しいっ!」
その数倍ーいや、想像を超える喜びを得たのは、息吹にではなく…晴明の方だった。

