胸を撫で下ろした息吹は、人魚に駆け寄って手を握った。
「人魚さんが助けてくれたの。私だけじゃ、扉を開けてたかも…」
「ふむ、人助けをしたと?それは珍しい」
「あたしは何もしてない。傍観者だって言ったろ」
「またまたあ。人魚さんは照れ屋さんなんだね」
すっかり懐いてしまった息吹に閉口した人魚。
対して晴明は珍しく吹き出すと、息吹の肩を抱いて屋敷へと上がる。
道満が息吹に関心を持ったことは憂慮しなければならない。
ここから出ては、すぐに何かしらの接触をしてくることだろう。
「大切な話をするからよく聞きなさい。いいね?」
「う、うん」
小さな両手を包み込むようにして握り締めた晴明は、息吹の顔を覗き込んだ。
「先程の男は小物だが、知恵が回る。ここから外に出ては捕らえられて何かされるかもしれない」
「ここから出なきゃいいの?」
「そうだよ。それと、道満よりも厄介なのは…主さまなんだよ」
「主しゃま…」
急に表情が曇った息吹にまた妙なもやもやを感じながらも、晴明は訥々と諭す。
「私が幽玄町から連れ出したことを最も恨んでいるのは主さまだろう。そなたがここから出ては私は殺され、そなたは食われてしまうかもしれないのだ」
ふたりとも、あの主さまに殺されてしまうかもしれないという恐怖感に、息吹の手から力が抜けて肩が落ちた。
「そなたは主さまたちのことを忘れてこちらで暮らすと決めたね?」
「うん…でも主しゃまがそんなことを…」
「あの男はね、妖の頂点に君臨している大妖なんだよ。私たちを殺すなど他愛のないこと。だが、ここから出なければいい話。わかるかい?」
「はい…。晴明しゃま、死なないで」
「もし主さまが立ち向かってくるならば、私も全力を賭して戦う。そうならないように、互いに努力しよう」
ーー息吹がまだ主さまたちを忘れることができないのはわかっている。
だがそれは時間をかければきっと解消できる問題だ。
「私…ここから出ません。晴明しゃま、これからもよろしくお願いします」
「もちろんだとも。さあ、おいで」
優しい声色で呼びかけるとすぐに抱き着いてきた。
この温もりを知ってしまったら、もう離せない。
晴明の父親奮闘記がはじまった。
「人魚さんが助けてくれたの。私だけじゃ、扉を開けてたかも…」
「ふむ、人助けをしたと?それは珍しい」
「あたしは何もしてない。傍観者だって言ったろ」
「またまたあ。人魚さんは照れ屋さんなんだね」
すっかり懐いてしまった息吹に閉口した人魚。
対して晴明は珍しく吹き出すと、息吹の肩を抱いて屋敷へと上がる。
道満が息吹に関心を持ったことは憂慮しなければならない。
ここから出ては、すぐに何かしらの接触をしてくることだろう。
「大切な話をするからよく聞きなさい。いいね?」
「う、うん」
小さな両手を包み込むようにして握り締めた晴明は、息吹の顔を覗き込んだ。
「先程の男は小物だが、知恵が回る。ここから外に出ては捕らえられて何かされるかもしれない」
「ここから出なきゃいいの?」
「そうだよ。それと、道満よりも厄介なのは…主さまなんだよ」
「主しゃま…」
急に表情が曇った息吹にまた妙なもやもやを感じながらも、晴明は訥々と諭す。
「私が幽玄町から連れ出したことを最も恨んでいるのは主さまだろう。そなたがここから出ては私は殺され、そなたは食われてしまうかもしれないのだ」
ふたりとも、あの主さまに殺されてしまうかもしれないという恐怖感に、息吹の手から力が抜けて肩が落ちた。
「そなたは主さまたちのことを忘れてこちらで暮らすと決めたね?」
「うん…でも主しゃまがそんなことを…」
「あの男はね、妖の頂点に君臨している大妖なんだよ。私たちを殺すなど他愛のないこと。だが、ここから出なければいい話。わかるかい?」
「はい…。晴明しゃま、死なないで」
「もし主さまが立ち向かってくるならば、私も全力を賭して戦う。そうならないように、互いに努力しよう」
ーー息吹がまだ主さまたちを忘れることができないのはわかっている。
だがそれは時間をかければきっと解消できる問題だ。
「私…ここから出ません。晴明しゃま、これからもよろしくお願いします」
「もちろんだとも。さあ、おいで」
優しい声色で呼びかけるとすぐに抱き着いてきた。
この温もりを知ってしまったら、もう離せない。
晴明の父親奮闘記がはじまった。

