夕方に差し迫り、百鬼夜行の時間が近付くと、主さまの屋敷の庭には百鬼たちがわらわらと集結し始めた。
角隠しに白無垢姿の若葉と、袴姿の銀――
2人が夫婦になったことは彼らにとっても嬉しかったらしく、口々に囃し立てては軽口を叩いて祝福した。
主さまは今夜は朔を連れて行くようで、息吹が手を振って彼らを送り出す。
続いて百鬼たちも空を駆けて居なくなると、残された銀と若葉は顔を見合わせて、ぎくしゃくと立ち上がった。
「じゃあ…帰るか。お前が帰って早々掃除して体調を崩さないように綺麗にしておいたからな」
「ぎんちゃんありがとう。じゃあ…」
「後で俺と山姫が料理を運んでやるから先に戻ってていいぞ。ゆっくり風呂でも入れよ」
「あんた馬鹿だねえ、あたしたちが料理を運び終えるまで風呂なんか入れるもんか」
「え?なんでだよ」
山姫が残った料理を皿に取り分けながらくすくす笑う。
見透かされた気分になった銀は、きょとんとしている若葉の手を引いて部屋から出たが、若葉は追及をしてきた。
「ぎんちゃん、今のどういう…」
「なんでもない。俺が風呂を沸かしてやるから、先に入ってゆっくり肩まで浸かるんだぞ」
「一緒に入らないの?」
思わず立ち止まってしまった銀は、またちぎれんばかりに尻尾が動きそうになるのを掴んで止めながら、なんでもないという顔をして草履を履いた。
「入らない。俺はお前が入った後でいい」
「うん。じゃあぎんちゃんの背中流してあげる」
「だからそれはいい。ほら、行くぞ」
…自分だけが緊張しているのが馬鹿らしくなった銀は、徒歩数分の新居に着くと、各部屋の行燈と火鉢に炎を燈して部屋を明るくした。
久々に屋敷に戻って来た若葉はようやくほっと息をついて角隠しを取ると、火鉢の前に座って銀を見上げた。
「疲れちゃった。ぎんちゃんは大丈夫?」
「俺はなんとも。…やっと2人になれたな」
「主さまの屋敷でも2人だった時は沢山あったでしょ。ぎんちゃん…どうしたの?」
せっかく盛り上がってきた気分をぶち壊しにされた銀は、若葉の頭をぐりぐり撫でて苦笑すると、ごろんと横になって若葉を手で追い払った。
「早く風呂に入れ。俺ももうそろそろ限界だからな」
「そんなにお風呂に入りたいなら、私は後でいいよ?」
…何もわかっていない若葉の言動に終始苦笑しっぱなしの銀だったが、待ち望んだ夜を忘れられないものとするために、気を静めて若葉が戻って来るのを待った。
角隠しに白無垢姿の若葉と、袴姿の銀――
2人が夫婦になったことは彼らにとっても嬉しかったらしく、口々に囃し立てては軽口を叩いて祝福した。
主さまは今夜は朔を連れて行くようで、息吹が手を振って彼らを送り出す。
続いて百鬼たちも空を駆けて居なくなると、残された銀と若葉は顔を見合わせて、ぎくしゃくと立ち上がった。
「じゃあ…帰るか。お前が帰って早々掃除して体調を崩さないように綺麗にしておいたからな」
「ぎんちゃんありがとう。じゃあ…」
「後で俺と山姫が料理を運んでやるから先に戻ってていいぞ。ゆっくり風呂でも入れよ」
「あんた馬鹿だねえ、あたしたちが料理を運び終えるまで風呂なんか入れるもんか」
「え?なんでだよ」
山姫が残った料理を皿に取り分けながらくすくす笑う。
見透かされた気分になった銀は、きょとんとしている若葉の手を引いて部屋から出たが、若葉は追及をしてきた。
「ぎんちゃん、今のどういう…」
「なんでもない。俺が風呂を沸かしてやるから、先に入ってゆっくり肩まで浸かるんだぞ」
「一緒に入らないの?」
思わず立ち止まってしまった銀は、またちぎれんばかりに尻尾が動きそうになるのを掴んで止めながら、なんでもないという顔をして草履を履いた。
「入らない。俺はお前が入った後でいい」
「うん。じゃあぎんちゃんの背中流してあげる」
「だからそれはいい。ほら、行くぞ」
…自分だけが緊張しているのが馬鹿らしくなった銀は、徒歩数分の新居に着くと、各部屋の行燈と火鉢に炎を燈して部屋を明るくした。
久々に屋敷に戻って来た若葉はようやくほっと息をついて角隠しを取ると、火鉢の前に座って銀を見上げた。
「疲れちゃった。ぎんちゃんは大丈夫?」
「俺はなんとも。…やっと2人になれたな」
「主さまの屋敷でも2人だった時は沢山あったでしょ。ぎんちゃん…どうしたの?」
せっかく盛り上がってきた気分をぶち壊しにされた銀は、若葉の頭をぐりぐり撫でて苦笑すると、ごろんと横になって若葉を手で追い払った。
「早く風呂に入れ。俺ももうそろそろ限界だからな」
「そんなにお風呂に入りたいなら、私は後でいいよ?」
…何もわかっていない若葉の言動に終始苦笑しっぱなしの銀だったが、待ち望んだ夜を忘れられないものとするために、気を静めて若葉が戻って来るのを待った。

