主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

心の底からの笑顔を見せた若葉を本当に美しいと思った銀の尻尾は、爆発せんばかりに激しくぴょこぴょこ動いた。

珍しくも興奮している姿を見た主さまはなんとか笑いを堪えようとして片手で口を覆ったのだが…顔が赤くなってしまって息吹に突っ込まれた。


「主さま顔が赤いよ。銀さんに失礼でしょ」


「いや…珍しいものを見れた。息吹、祝言は早めに切り上げてやれ。銀のためにも」


「?うん、百鬼夜行もあるんでしょ?その頃には片付いてるようにするから」


主さまも息吹も、若葉の全開の笑顔をはじめて見た。

普段は表情がほとんど無いので余計に可愛らしく見えて、主さまと息吹もとても喜んだのだが…銀には適わない。

その笑顔を少しでも長く見ていたいらしく、なんとかして若葉を笑わせてやろうとしている銀もまた可愛らしく、主さまと息吹が誰にも知られないようにこっそりと手を繋いだ時――


「間に合ったかな」


「父様!お祝いに来てくれたのっ?」


すぐさま駆け寄ろうとした息吹の手を離さずにぎゅっと力を込めると、息吹は苦笑してまたその場に正座して大好きな父を見上げた。

晴明は烏帽子を取って懐から幾つかの包み紙を取り出して、銀と若葉の前に座った。


「数日分の薬を用意した。これでしばらくは家から出ずに済む」


「なんだそれは。どういう意味だ」


銀が苦笑すると、晴明は徳利を傾けて銀が手にしていた盃に酒を注ぎこむ。

言わんとしている意味はわかっていたが、若葉はわかっていないらしく、きょとんとしていた。


「意味はわかっているはずだが」


「わかったわかった、若葉の前で言うな。お前の薬を飲んでいると若葉の調子がいい。これからも頼む」


「わかっている。さて用も済んだし、百鬼夜行まで十六夜をからかうとしようかな」


ぎくっとなった主さまを見てにやりと微笑んだ晴明は、立ち上がり様に微笑みながら若葉の頭を撫でた。


「おめでとう。良き日に立ち会うことができて嬉しく思う。末永く幸せにおなり」


「ありがとう、晴明様」


言葉少なな若葉が微笑むと、微笑み返した晴明は早速主さまの前に座って、息吹の横取り作戦を開始した。


「さて十六夜、私と楽しく話をしよう」


「…楽しいものか。用が済んだら帰れ」


「駄目駄目っ、父様、もうちょっと居られるでしょっ?居てくれるよね?」


銀と若葉は顔を見合わせてその光景を笑いながら、手を握り合う。

本当に本当に、幸せだった。