主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

食欲が戻った若葉は、息吹と山姫が作ってくれた料理に舌鼓を打ち、鯛の刺身を銀の口に入れて食べさせ合ったりして祝言を楽しんだ。


主さまと息吹は誰もが羨むお似合いで最高の夫婦だ。

そんな2人が仲人をしてくれてここまでおぜん立てしてくれたので、嬉しくて何度も主さまと息吹に頭を下げた。


「若葉、その簪つけてくれたんだね。すっごくよく似合ってるよ。ね、主さま」


「ああ、そうだな。ちなみに祝言が終わったら料理は全て持ち帰ってくれ。2人でもう1度祝言を挙げるといい」


「主さまありがとう」


わいわいと騒がしい中、子供たちと遊んでいた雪男が徳利を手に目の前に座ると、若葉は幼い頃からよく遊んでくれた雪男の着物の袖を握って笑いかけた。


「雪ちゃん」


「この前まで小さかったのに、もう嫁ぐのか。なんか寂しいけど、銀に幸せにしてもらえよ」


「うん。私雪ちゃんのお嫁さんになるのもいいなあって思ってる時もあったけど、やっぱりぎんちゃんの方がいい。雪ちゃんも早くお嫁さんが見つかるといいね」


「いや、俺はもう見つけてるし。…おっと、主さまが睨んでるからもう行くよ。とにかくおめでとう」


主さまの殺気を感じてそそくさと退散した雪男に手を振っていると、部屋の入り口で見かけない小さな女の子を目にした若葉は首を傾げた。

真っ赤な着物を着たおかっぱの黒髪の女の子――

主さまと息吹の子ではないのでじっと見つめていると、息吹がその女の子に声をかけた。


「わあ、久しぶりだね。こっちにおいで、若葉を祝いに来てくれたの?」


「めでたい空気に誘われてやって来た。ほう…これは良い夫婦だ」


童女の姿なのに口調は大人びていて、誰だかわからないままの若葉が銀の袖を引っ張ると、銀は若葉の耳元でこそりと正体を明かした。


「あれは座敷童だ。姿を見ると縁起が良いと言われている」


「座敷童?じゃあ、私とぎんちゃんは末永く仲良し夫婦でいられるってことだね」


息吹の隣に座った座敷童は煮豆に手を伸ばして頬張りながら、息吹を見上げた。


「私が姿を現したのはそなたが十六夜と夫婦になった時以来だ。これは良縁になるだろう。私が保証する」


滅多に姿を現すことのない座敷童に太鼓判を押されて喜んだ若葉が銀の腕に抱き着くと、座敷童は煮豆の入った重箱を腕に抱えて部屋を出て行く。


皆に祝福された若葉の顔にはじめて全開の笑顔が浮かんだ。