渋々着せられた袴姿の銀を見た時――
若葉がはじめて声を上げて笑った。
「あははっ、ぎんちゃ…なにそれ、全然似合ってない。面白いっ」
「そんなに笑わなくてもいいじゃないか。俺も似合ってないのは重々承知だ」
ご丁寧に尻尾が外に出るように穴を開けられている袴のお尻の辺りから飛び出た尻尾は元気なくうなだれていたが、若葉の大笑いを聞くと急にぴょこぴょこ動き出し、普段あまり笑わない主さまさえも噴き出した。
「なんだ、何故笑う?」
「…いや、別に。広間を用意した。準備ができたら2人で来い」
息吹の肩を抱いた主さまたちが部屋を出ると、銀は鏡台の前に立ち、ため息をついた。
「早く脱ぎたい」
「私はこれずっと着ていたいな。ちょっと重たいけどすごく綺麗」
「ああ、白無垢も綺麗だが…お前が綺麗だ」
目をぱちくりとして見上げてきた若葉の両肩を抱いて腰を折って顔を近付けた銀は、耳元でこそっと囁いた。
「早く獣になってお前を襲いたい」
「!ぎ、ぎんちゃん…。ぎんちゃんの助平」
「獣としての本性が叫んでいるだけだ。これが終わったら……まあいい、後でゆっくり話そう」
屋敷中が祭りのような騒ぎで、廊下は子供たちが走り回っているし、朝でも動ける力の強い妖たちも辺りをうろついている。
こんな中満足にいちゃつけるはずもなく、若葉の手を引いて広間へ行くと――そこは豪華絢爛な料理に溢れていた。
「お前たちは金屏風の前に座れ。俺と息吹が祝言を挙げた時に使った屏風だ」
「おお、それは縁起が良いな。さあ、若葉」
わくわく顔の息吹と目が合った若葉は、しずしずとした足取りで金屏風の前に用意された席に座り、銀は百鬼たちから笑われて肩を竦めていた。
だが尻尾と耳はずっと動いていたので機嫌が悪いというわけではないらしく、若葉は緊張を解すために銀の尻尾を膝に引き寄せると、さわさわと触って気分を落ち着けた。
「お前たちは今日夫婦となる。俺と息吹が仲人だ。今後一生添い遂げて、幸せになれ。言っておくが、もう離縁は許さない」
「わかっている。俺ももう若葉を離すつもりはない。今後もずっと一緒に生きてゆく。転生しても、ずっとだ」
「ぎんちゃん…」
ぎゅっと手を握り合った2人を百鬼が囃し立てて、口笛と拍手が巻き起こった。
三々九度の盃を手にした2人は――遠回りしながらも、ようやく夫婦となった。
若葉がはじめて声を上げて笑った。
「あははっ、ぎんちゃ…なにそれ、全然似合ってない。面白いっ」
「そんなに笑わなくてもいいじゃないか。俺も似合ってないのは重々承知だ」
ご丁寧に尻尾が外に出るように穴を開けられている袴のお尻の辺りから飛び出た尻尾は元気なくうなだれていたが、若葉の大笑いを聞くと急にぴょこぴょこ動き出し、普段あまり笑わない主さまさえも噴き出した。
「なんだ、何故笑う?」
「…いや、別に。広間を用意した。準備ができたら2人で来い」
息吹の肩を抱いた主さまたちが部屋を出ると、銀は鏡台の前に立ち、ため息をついた。
「早く脱ぎたい」
「私はこれずっと着ていたいな。ちょっと重たいけどすごく綺麗」
「ああ、白無垢も綺麗だが…お前が綺麗だ」
目をぱちくりとして見上げてきた若葉の両肩を抱いて腰を折って顔を近付けた銀は、耳元でこそっと囁いた。
「早く獣になってお前を襲いたい」
「!ぎ、ぎんちゃん…。ぎんちゃんの助平」
「獣としての本性が叫んでいるだけだ。これが終わったら……まあいい、後でゆっくり話そう」
屋敷中が祭りのような騒ぎで、廊下は子供たちが走り回っているし、朝でも動ける力の強い妖たちも辺りをうろついている。
こんな中満足にいちゃつけるはずもなく、若葉の手を引いて広間へ行くと――そこは豪華絢爛な料理に溢れていた。
「お前たちは金屏風の前に座れ。俺と息吹が祝言を挙げた時に使った屏風だ」
「おお、それは縁起が良いな。さあ、若葉」
わくわく顔の息吹と目が合った若葉は、しずしずとした足取りで金屏風の前に用意された席に座り、銀は百鬼たちから笑われて肩を竦めていた。
だが尻尾と耳はずっと動いていたので機嫌が悪いというわけではないらしく、若葉は緊張を解すために銀の尻尾を膝に引き寄せると、さわさわと触って気分を落ち着けた。
「お前たちは今日夫婦となる。俺と息吹が仲人だ。今後一生添い遂げて、幸せになれ。言っておくが、もう離縁は許さない」
「わかっている。俺ももう若葉を離すつもりはない。今後もずっと一緒に生きてゆく。転生しても、ずっとだ」
「ぎんちゃん…」
ぎゅっと手を握り合った2人を百鬼が囃し立てて、口笛と拍手が巻き起こった。
三々九度の盃を手にした2人は――遠回りしながらも、ようやく夫婦となった。

