翌朝――若葉は誰よりも早起きをして、息吹と2人で新しい白無垢の衣装に見入っていた。
「お姉ちゃんの白無垢…駄目にしちゃってごめんなさい」
「ううん、いいの。これだって素敵な白無垢。銀さんはまだ寝てるの?珍しいね」
「多分起きてるんだけど、寝てるふりをしてくれてるみたい。だって耳がぴょこぴょこしてたもん」
2人で笑い、白無垢に袖を通して、本物の花嫁になる――
好きな男に嫁いで、好きな男の子を生んで…そして死んでゆくのだ。
それはとても幸せなことで、名誉なことに思えた。
「今帰ったぞ」
「あ、主さま。見て見て、綺麗でしょ?」
白無垢を着終えた若葉が振り返ると、百鬼夜行から戻って来た主さまは、少しだけ頬を緩めて腕を組み、柱にもたれ掛った。
「綺麗だな。銀が喜ぶだろう」
「ひのえちゃんに嫁いだ日…真っ白な狐になったぎんちゃんが来てくれたこと覚えてる。私が飛び出して行ったのにぎんちゃんは…」
「銀もあの時気持ちのけりをつけようとしていた。結局は適わなかったわけだが、結果がこれならば文句はない」
妖の中で最も強く美しい主さまに微笑まれて少し照れた若葉は、鏡台の前に導かれて座ると、櫛で髪を梳かれて瞳を閉じた。
…丙に嫁いだ時はこんな穏やかな気持ちではなくて、“これでいいのだろうか”と常に考えて、常に迷っていたけれど――
「どうだ、できたか?寝ているふりももう限界だぞ」
「ぎんちゃん」
痺れを切らして顔を出しに来た銀は、髪を結い上げてぐっと女らしくなった若葉に目を奪われて、顔からにやけ笑いが消えた。
薄化粧をして真っ赤な紅を引いた若葉は美しく、花の香りに吸い寄せられるようにして若葉の隣に座ると、まじまじと顔を覗き込む。
「ぎんちゃん近過ぎ」
「変わったものだな。お前…こんなに美しかったか?」
「おい、のろけなら祝言が終わってからやれ。お前も着替えてもらうぞ。こっちに来い」
「待て、お前が手伝うのか?俺は息吹がいい」
「ふざけるな。殴られたくなければ早く来い」
冗談の通じない主さまに怒られてしまった銀は、仕方なく腰を上げて若葉の肩に触れた。
「袴姿の俺を見て笑うなよ」
「絶対笑うよ、絶対似合わないと思うから」
互いにぷっと噴き出した銀と若葉は微笑ましく、まだ泣くまいと決めていた息吹は真剣な顔つきで若葉をもっと美しくすべく努めた。
「お姉ちゃんの白無垢…駄目にしちゃってごめんなさい」
「ううん、いいの。これだって素敵な白無垢。銀さんはまだ寝てるの?珍しいね」
「多分起きてるんだけど、寝てるふりをしてくれてるみたい。だって耳がぴょこぴょこしてたもん」
2人で笑い、白無垢に袖を通して、本物の花嫁になる――
好きな男に嫁いで、好きな男の子を生んで…そして死んでゆくのだ。
それはとても幸せなことで、名誉なことに思えた。
「今帰ったぞ」
「あ、主さま。見て見て、綺麗でしょ?」
白無垢を着終えた若葉が振り返ると、百鬼夜行から戻って来た主さまは、少しだけ頬を緩めて腕を組み、柱にもたれ掛った。
「綺麗だな。銀が喜ぶだろう」
「ひのえちゃんに嫁いだ日…真っ白な狐になったぎんちゃんが来てくれたこと覚えてる。私が飛び出して行ったのにぎんちゃんは…」
「銀もあの時気持ちのけりをつけようとしていた。結局は適わなかったわけだが、結果がこれならば文句はない」
妖の中で最も強く美しい主さまに微笑まれて少し照れた若葉は、鏡台の前に導かれて座ると、櫛で髪を梳かれて瞳を閉じた。
…丙に嫁いだ時はこんな穏やかな気持ちではなくて、“これでいいのだろうか”と常に考えて、常に迷っていたけれど――
「どうだ、できたか?寝ているふりももう限界だぞ」
「ぎんちゃん」
痺れを切らして顔を出しに来た銀は、髪を結い上げてぐっと女らしくなった若葉に目を奪われて、顔からにやけ笑いが消えた。
薄化粧をして真っ赤な紅を引いた若葉は美しく、花の香りに吸い寄せられるようにして若葉の隣に座ると、まじまじと顔を覗き込む。
「ぎんちゃん近過ぎ」
「変わったものだな。お前…こんなに美しかったか?」
「おい、のろけなら祝言が終わってからやれ。お前も着替えてもらうぞ。こっちに来い」
「待て、お前が手伝うのか?俺は息吹がいい」
「ふざけるな。殴られたくなければ早く来い」
冗談の通じない主さまに怒られてしまった銀は、仕方なく腰を上げて若葉の肩に触れた。
「袴姿の俺を見て笑うなよ」
「絶対笑うよ、絶対似合わないと思うから」
互いにぷっと噴き出した銀と若葉は微笑ましく、まだ泣くまいと決めていた息吹は真剣な顔つきで若葉をもっと美しくすべく努めた。

