主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「若葉の体調は回復に向かっている。近々祝言を挙げさせて、夫婦にさせてやるがいいだろう」


「…急がなくてはいけないのか?……悪いんだな?」


「これ以上の悪化は無い、と言っているのだ。私の薬を服用している間は問題ないだろう。今後夫婦となって子を生むのであれば、結果的にその子が成人する姿を若葉は見ることができぬ。だが…銀と共に過ごす時をなるべく長いものにすることができるよう私も努める」


「父様、ありがとう。じゃあ主さま、私祝言の準備を進めておきます。いいよね?」


「ああ、そうしてくれ。俺も百鬼共に延命に利くものがあるか聞いておく」


嬉しそうに笑った息吹が部屋から出て行くと、晴明は大きく息をついて息吹が淹れてくれた茶を胃に流し込んだ。

その様子がいつもと違うことに気付いた主さまは、縁側から息吹が綺麗に咲き誇らせた庭を眺めながら、呟いた。


「銀とて納得している。若葉が転生して再び巡り合うまで、奴ならば待ち続けるだろう。晴明、お前は身内だろうが。お前が支えてやれ」


「そのつもりだが、忙しくなるねえ。孫の相手もしなければならぬし、新帝から宮仕えの話もきている。そなたこそ突っ走り気味になりがちな私の娘をよく抑えてもらわなければ困るぞ」


「わかっている。しばらくは銀と若葉を見守るつもりだ」


腰を上げた晴明は、雪男と山姫と共に真剣な顔をして祝言の日取りや料理の内容を決めている姿を微笑ましく見つめると、ぱちんと扇子を閉じて庭先に降りて平安町へと戻って行った。

すると入れ替わりに銀が部屋から出てきて主さまの隣に座り、しばらくの間無言が続いたが…主さまが横目でちらりと盗み見すると、銀の尻尾と耳はぴょこぴょこ動いていた。

尻尾と耳は機嫌の良し悪しを判断できるので、今の銀は機嫌が良いのだとわかると、祝言のことを口にした。


「祝言の話を進めておく。お前は何もしなくてもいい。若葉の傍に居てやれ」


「お前が優しいと気持ち悪い。だが…本当に助かっている。神降ろしの舞いなどはじめて見たぞ」


「舞い方は知ってはいたが、はじめて舞った。もう二度と舞うつもりはない。銀、お前は百鬼のままだ。10年後はまた共に百鬼夜行に出てもらう」


「わかった。俺もそれまでの間に子作りに励むとしよう。お前のように」


「……」


むっつりして黙り込んだ主さまの肩を抱いて笑った銀は、この後若葉に祝言の話をしようと決めて、あたたかい気持ちになった。