銀と若葉を2人きりにさせて部屋を出た息吹は、主さまに熱いお茶を淹れて夫婦の部屋に入ると、着物の袖で目じりを擦りながら天井を見上げた。
「主さまありがとう。主さまや潭月さんが協力してくれたんでしょ?」
「神降ろしの儀式を行った。高千穂峰で舞いを舞って、楽を奏でる。…親父の舞いをはじめて見た」
「え…っ?舞いっ?主さまが?見たかった!今ここでやってみて!」
「な…っ、もう2度とやるものか!お前に話すんじゃなかった」
息吹がずっと天井を見上げているのは涙を堪えているためだと気付いていた主さまは、むっつりしながらもごろんと横になって息吹の膝枕にあやかった。
我が子を身籠るよりも先に、赤子だった若葉を育ててきた息吹の胸は今悲しみで引き裂かれんばかりかもしれない――
あと10年で失ってしまう命の若葉とこれからどう接していくか…
そういった悩みを自ら打ち明けることの少ない息吹が頭を撫でてくれていた手を握った主さまは、滑らかな手の甲に口づけをして息吹を見上げた。
「…お前はどうしたい?」
「どうしたいって…若葉は銀さんと一緒に居るのがいいと思うよ。10年かあ…でもまだ10年もあるよ。その間に赤ちゃんもできるだろうし、私にもお世話させてもらえると嬉しいんだけど」
「ああ、俺からも銀にそう言っておく。後で晴明に若葉の体調を診てもらい、身体が回復しているようだったら…この家から追い出そう。お前とゆっくり2人きりになれない」
「またそんなこと言って!主さまの助平!」
詰られながらも笑い合っていた頃、若葉はようやく銀から解放されて、晴明の訪問を受けていた。
「お楽しみのところ悪いが、若葉の病の様子を診せてもらおう。私の薬は効いているのかな?」
「まだお楽しみはお預けだ。お前の薬のおかげで発作のような咳は治まっている。ありがたい」
「ふむ、私の薬は万能だからねえ。万能故に、薬を飲むのを忘れてしまうと激しい咳に見舞われるぞ。若葉、それを覚えておきなさい」
「はい、晴明様、ありがとう」
笑みの増えた若葉を微笑ましく思った晴明は、横になった若葉の傍らに座ると、若葉の胸に手をあてて瞳を閉じた。
…身体の内側からはごろごろという妙で不吉な音が絶え間なく聞こえる。
だが痛みは感じていないようなので薬で抑えることはできるが…出産に耐えられる身体なのかと言ったら、今はそうではない。
「…銀よ、若葉の体調が回復したならば、なるべく一緒に散策などに出かけて体力をつけさせてやるのだ。よいな?」
「わかった。恩に着る」
殊勝な銀は気持ち悪かったが、肩を竦めた晴明はそれ以上語ることなく腰を上げて部屋から出て行った。
「主さまありがとう。主さまや潭月さんが協力してくれたんでしょ?」
「神降ろしの儀式を行った。高千穂峰で舞いを舞って、楽を奏でる。…親父の舞いをはじめて見た」
「え…っ?舞いっ?主さまが?見たかった!今ここでやってみて!」
「な…っ、もう2度とやるものか!お前に話すんじゃなかった」
息吹がずっと天井を見上げているのは涙を堪えているためだと気付いていた主さまは、むっつりしながらもごろんと横になって息吹の膝枕にあやかった。
我が子を身籠るよりも先に、赤子だった若葉を育ててきた息吹の胸は今悲しみで引き裂かれんばかりかもしれない――
あと10年で失ってしまう命の若葉とこれからどう接していくか…
そういった悩みを自ら打ち明けることの少ない息吹が頭を撫でてくれていた手を握った主さまは、滑らかな手の甲に口づけをして息吹を見上げた。
「…お前はどうしたい?」
「どうしたいって…若葉は銀さんと一緒に居るのがいいと思うよ。10年かあ…でもまだ10年もあるよ。その間に赤ちゃんもできるだろうし、私にもお世話させてもらえると嬉しいんだけど」
「ああ、俺からも銀にそう言っておく。後で晴明に若葉の体調を診てもらい、身体が回復しているようだったら…この家から追い出そう。お前とゆっくり2人きりになれない」
「またそんなこと言って!主さまの助平!」
詰られながらも笑い合っていた頃、若葉はようやく銀から解放されて、晴明の訪問を受けていた。
「お楽しみのところ悪いが、若葉の病の様子を診せてもらおう。私の薬は効いているのかな?」
「まだお楽しみはお預けだ。お前の薬のおかげで発作のような咳は治まっている。ありがたい」
「ふむ、私の薬は万能だからねえ。万能故に、薬を飲むのを忘れてしまうと激しい咳に見舞われるぞ。若葉、それを覚えておきなさい」
「はい、晴明様、ありがとう」
笑みの増えた若葉を微笑ましく思った晴明は、横になった若葉の傍らに座ると、若葉の胸に手をあてて瞳を閉じた。
…身体の内側からはごろごろという妙で不吉な音が絶え間なく聞こえる。
だが痛みは感じていないようなので薬で抑えることはできるが…出産に耐えられる身体なのかと言ったら、今はそうではない。
「…銀よ、若葉の体調が回復したならば、なるべく一緒に散策などに出かけて体力をつけさせてやるのだ。よいな?」
「わかった。恩に着る」
殊勝な銀は気持ち悪かったが、肩を竦めた晴明はそれ以上語ることなく腰を上げて部屋から出て行った。

