主さまたちが揃って屋敷に戻って来ると、それまで眠っていた若葉は、これからきっと何か大切な話があるのだと悟って床から出てきちんと正座をした。
「ちゃんと寝ていたんだろうな?」
「うん、ちゃんと寝てた。ぎんちゃんこそまたどこかに行ってたでしょ。そろそろどこに行ってたか教えてくれてもいいんじゃない?」
「…その話をこれからする。よく聞いてくれ」
普段浮かべないような真面目な表情で目の前に腰を下ろした銀を見つめた若葉は、部屋の端に揃って座って主さまと若葉と晴明の姿に一抹の不安を覚えた。
きっといい報告ではないのだろう、ということだけは何故かわかって、火鉢を引き寄せてくれた銀をじっと見つめて語り始めるのを待っていたのだが…
銀はなかなかそれを口に出すことができないようで、若葉は銀の緊張を解してやるために、いつものように銀のふわふわの尻尾を弄り始めた。
「ぎんちゃん、陽が暮れちゃうよ」
「……最近ずっと俺が出かけていたのは…高千穂だ」
「高千穂?高千穂ってどんなところ?」
「神が降臨した地と言われている聖なる地だ。…俺はそこに通い、お前の病の治癒を神に願っていた」
…そういえば、この胸から聞こえる消えない妙な音…
血を吐くことはなくなったが、それでもごろごろと妙な音を立てて消えないこの音の病の正体を銀は知っている――
若葉は尻尾を弄る手を止めてまた居住まいを正して背筋を伸ばした。
「ぎんちゃん…ありがとう。それで…どうしたの?」
銀は主さまたちに視線を遣り、主さまが頷いたのを見ると、若葉の両手を握って身を乗り出しながら、濃紺の瞳に苦渋の光を浮かべながら口を開いた。
「お前は10年後…病に倒れて死ぬ」
「……私が…10年後…死ぬ…?」
「その病を治すことはできないと神から言われた。だがお前は再び転生し、俺と巡り合うと言われた。若葉…お前はあと10年しか生きることができない。だからその10年を俺と共に生きてくれ。そしてお前が死んだ後も俺はお前を待ち続ける。ずっとだ」
「ずっと…本当?」
死ぬことが怖くないと言えば嘘になるけれど、転生して再び銀と巡り合うと教えられた若葉は逆にほっとして、握った手に力を込めて笑顔を浮かべた。
食い入るように見つめてくる銀の顔を覗き込みながら、告げられて感じた気持ちを正直に、口に乗せた。
「ぎんちゃんとまた出会えるのならいいよ、私…怖くない。だってこれからもずっとぎんちゃんと一緒ってことでしょ?私次は妖として生まれてきたいな。そうでないとまたぎんちゃんと離れ離れになっちゃうから」
「…ああ、これからもずっと俺もそう願い続ける。若葉…怖くないからな、俺がずっと傍に居てやる」
主さまたちがそっと席を外して部屋から出て行くと、銀は若葉を抱きしめて動かなくなった。
若葉もまた、ずっとずっと銀を抱きしめて、転生して再び出会うことの喜びを噛み締めた。
「ちゃんと寝ていたんだろうな?」
「うん、ちゃんと寝てた。ぎんちゃんこそまたどこかに行ってたでしょ。そろそろどこに行ってたか教えてくれてもいいんじゃない?」
「…その話をこれからする。よく聞いてくれ」
普段浮かべないような真面目な表情で目の前に腰を下ろした銀を見つめた若葉は、部屋の端に揃って座って主さまと若葉と晴明の姿に一抹の不安を覚えた。
きっといい報告ではないのだろう、ということだけは何故かわかって、火鉢を引き寄せてくれた銀をじっと見つめて語り始めるのを待っていたのだが…
銀はなかなかそれを口に出すことができないようで、若葉は銀の緊張を解してやるために、いつものように銀のふわふわの尻尾を弄り始めた。
「ぎんちゃん、陽が暮れちゃうよ」
「……最近ずっと俺が出かけていたのは…高千穂だ」
「高千穂?高千穂ってどんなところ?」
「神が降臨した地と言われている聖なる地だ。…俺はそこに通い、お前の病の治癒を神に願っていた」
…そういえば、この胸から聞こえる消えない妙な音…
血を吐くことはなくなったが、それでもごろごろと妙な音を立てて消えないこの音の病の正体を銀は知っている――
若葉は尻尾を弄る手を止めてまた居住まいを正して背筋を伸ばした。
「ぎんちゃん…ありがとう。それで…どうしたの?」
銀は主さまたちに視線を遣り、主さまが頷いたのを見ると、若葉の両手を握って身を乗り出しながら、濃紺の瞳に苦渋の光を浮かべながら口を開いた。
「お前は10年後…病に倒れて死ぬ」
「……私が…10年後…死ぬ…?」
「その病を治すことはできないと神から言われた。だがお前は再び転生し、俺と巡り合うと言われた。若葉…お前はあと10年しか生きることができない。だからその10年を俺と共に生きてくれ。そしてお前が死んだ後も俺はお前を待ち続ける。ずっとだ」
「ずっと…本当?」
死ぬことが怖くないと言えば嘘になるけれど、転生して再び銀と巡り合うと教えられた若葉は逆にほっとして、握った手に力を込めて笑顔を浮かべた。
食い入るように見つめてくる銀の顔を覗き込みながら、告げられて感じた気持ちを正直に、口に乗せた。
「ぎんちゃんとまた出会えるのならいいよ、私…怖くない。だってこれからもずっとぎんちゃんと一緒ってことでしょ?私次は妖として生まれてきたいな。そうでないとまたぎんちゃんと離れ離れになっちゃうから」
「…ああ、これからもずっと俺もそう願い続ける。若葉…怖くないからな、俺がずっと傍に居てやる」
主さまたちがそっと席を外して部屋から出て行くと、銀は若葉を抱きしめて動かなくなった。
若葉もまた、ずっとずっと銀を抱きしめて、転生して再び出会うことの喜びを噛み締めた。

