晴明の屋敷に着いた息吹は、手作りの饅頭を包んだ風呂敷を笑顔全開で晴明に差し出した。
「父様、これ」
「ふむ、これは賄賂だね?私に何かおねだりをするつもりなのだろう?」
「えへ、やっぱり父様にはばればれだったね。うん、そうなの。若葉のことで主さまが今高千穂に行ってるんだけど…私に何かお手伝いできることがあるでしょ?」
何か確信を得た口調でそう言った息吹を庭の見渡せる広間に通した晴明は、腕を組んでとぼけた表情を浮かべた。
「さて、何を言っているのやら。そなたにできることとは何なのかな?」
「わかってるんでしょ?父様…私の中に神様が住んでるよね?力をお借りすることってできないのかな。もしできるのなら、父様…お願いします」
深々と頭を下げて願い出た息吹のつむじを見つめていた晴明は、息吹の中でもうずっと長い間眠り続けている木花咲耶姫の力を借りることを躊躇していた。
もし力を借りたとして木花咲耶姫が完全に目覚めてしまえば、息吹は再びかつてのように身体と意識を乗っ取られてしまうかもしれない。
愛娘を手放したくない晴明が否定の言葉を口に乗せようとした時、それを察知した息吹が首を振った。
「お願い父様。私の中に居る木花咲耶姫様がさっきから私に呼びかけている気がするの。でも私だけじゃ何もできないし…父様ならどうにかできるでしょ?」
縋るような瞳で上目遣いで見られてしまうと、愛娘にめっぽう弱い晴明はほとほと困り果てながらも、良い返事をすることしかできなかった。
「仕方ない、父様が手伝ってあげよう。だが息吹…意識を手放してはならないよ。木花咲耶姫がそなたの意識と身体を乗っ取ろうとするならば、私はすぐにでも術式を中止するからね」
「はい。父様ありがとう、大好き!」
――晴明は戸棚から古めかしい巻物を取り出すと、山姫に床を敷かせて息吹を横にさせた。
そして部屋のあちこちに五芒星の描かれた札を貼り、低い声で何か祝詞のような文言を唱えながら、胸に手をあてて瞳を閉じている息吹から目を離さずに意識を深いところにまで持っていった。
すると息吹の身体から仄かに淡く白い光のようなものが滲み出てくると、瞳を閉じている息吹の表情ががらりと変わった。
…本来ならば絶対にしたくはない術だったが、息吹の意識が強いものであることを信じて強く唱え続ける。
そして前触れもなくゆらりと半身が起き上がった息吹が瞳を開いた。
妖艶なその表情に、木花咲耶姫が降臨したことがわかった。
「父様、これ」
「ふむ、これは賄賂だね?私に何かおねだりをするつもりなのだろう?」
「えへ、やっぱり父様にはばればれだったね。うん、そうなの。若葉のことで主さまが今高千穂に行ってるんだけど…私に何かお手伝いできることがあるでしょ?」
何か確信を得た口調でそう言った息吹を庭の見渡せる広間に通した晴明は、腕を組んでとぼけた表情を浮かべた。
「さて、何を言っているのやら。そなたにできることとは何なのかな?」
「わかってるんでしょ?父様…私の中に神様が住んでるよね?力をお借りすることってできないのかな。もしできるのなら、父様…お願いします」
深々と頭を下げて願い出た息吹のつむじを見つめていた晴明は、息吹の中でもうずっと長い間眠り続けている木花咲耶姫の力を借りることを躊躇していた。
もし力を借りたとして木花咲耶姫が完全に目覚めてしまえば、息吹は再びかつてのように身体と意識を乗っ取られてしまうかもしれない。
愛娘を手放したくない晴明が否定の言葉を口に乗せようとした時、それを察知した息吹が首を振った。
「お願い父様。私の中に居る木花咲耶姫様がさっきから私に呼びかけている気がするの。でも私だけじゃ何もできないし…父様ならどうにかできるでしょ?」
縋るような瞳で上目遣いで見られてしまうと、愛娘にめっぽう弱い晴明はほとほと困り果てながらも、良い返事をすることしかできなかった。
「仕方ない、父様が手伝ってあげよう。だが息吹…意識を手放してはならないよ。木花咲耶姫がそなたの意識と身体を乗っ取ろうとするならば、私はすぐにでも術式を中止するからね」
「はい。父様ありがとう、大好き!」
――晴明は戸棚から古めかしい巻物を取り出すと、山姫に床を敷かせて息吹を横にさせた。
そして部屋のあちこちに五芒星の描かれた札を貼り、低い声で何か祝詞のような文言を唱えながら、胸に手をあてて瞳を閉じている息吹から目を離さずに意識を深いところにまで持っていった。
すると息吹の身体から仄かに淡く白い光のようなものが滲み出てくると、瞳を閉じている息吹の表情ががらりと変わった。
…本来ならば絶対にしたくはない術だったが、息吹の意識が強いものであることを信じて強く唱え続ける。
そして前触れもなくゆらりと半身が起き上がった息吹が瞳を開いた。
妖艶なその表情に、木花咲耶姫が降臨したことがわかった。

