百鬼夜行を終えた主さまは屋敷に戻らず、そのまま高千穂へ向かって銀の気配を辿りながら空を駆けた。
すると高千穂峰の山頂で銀が座しているのを見つけると、気配を押し殺してそろりと降り立ち、完全に無我の境地に入り込んでいる銀を見つめていた。
「…何をしに来た」
「気付いていたか。銀…若葉ではなくお前が倒れてしまうぞ。何かせずには居られないのは重々わかっているが、少し休め」
「お前が俺の立場だったならば、休んでいられるか?」
「…」
「だったら止めないでくれ。潭月にもここへは来るなと言っておいてくれ。時々ちょっかいを出しに来るから厄介でならない」
「…わかった。だが俺も手伝わせてもらう。お前だけでなく俺たちも案じていることを忘れるな」
禊をしたのか全身濡れたままの銀の尻尾と耳がぴょこぴょこと動いて返事をしたので、主さまは背を向けてその場から去ると、一路鬼族の隠れ里を目指した。
結界を張られている里は常人には近付くことができず、ほとんど里に帰ることのなかった主さまは難なく結界内に入り込むと、気配を察知した同胞にあっという間に囲まれて、瞳を細めた。
「あなたは先代の…!」
「親父は居るか?近くの池に居るからそこまで来いと伝えてくれ」
端的に告げてまたすぐ結界の外に出た主さまは、里の近くにあるため池の前で父を待ち受ける。
しばらくするとがさりと草を踏みながら姿を現した父の潭月を確認した主さまは、両腕を広げてにじり寄って来る潭月を躱して牙をむき出しにした。
「気持ち悪いことをするな」
「俺に会いに来たんだろう?息子を抱擁しようとして何が悪い?さあ来い」
「叩き斬るぞ。用があって来た。息吹が待っているからすぐに戻らなければならない。話を聞け」
つれなくされて仕方なく腕を下げた潭月は、腰に手をあてて遠くに見える高千穂峰を見上げた。
「銀の件だな?お前はかつて争った奴を助けるつもりなのか?お人よしにも程があるぞ」
「銀と夫婦になる若葉は息吹が育てたようなものだ。このままでは病で10年程で死んでしまう。若葉が死んでしまえば銀は再び荒れて俺が殺さなければならなくなる。それに息吹は銀と仲が良い。…悲しませたくない」
「お前は相変わらず妻命だな。まあ俺もそうだが」
潭月はしばらくの間顎に手を添えて考え事をしていたが、愛しい息子の為に決断を下した。
「よし、俺に任せておけ。だがお前には見届けてもらうぞ。百鬼夜行に遅れても俺は知らないからな」
無邪気に笑い、また高千穂峰に目を遣った。
すると高千穂峰の山頂で銀が座しているのを見つけると、気配を押し殺してそろりと降り立ち、完全に無我の境地に入り込んでいる銀を見つめていた。
「…何をしに来た」
「気付いていたか。銀…若葉ではなくお前が倒れてしまうぞ。何かせずには居られないのは重々わかっているが、少し休め」
「お前が俺の立場だったならば、休んでいられるか?」
「…」
「だったら止めないでくれ。潭月にもここへは来るなと言っておいてくれ。時々ちょっかいを出しに来るから厄介でならない」
「…わかった。だが俺も手伝わせてもらう。お前だけでなく俺たちも案じていることを忘れるな」
禊をしたのか全身濡れたままの銀の尻尾と耳がぴょこぴょこと動いて返事をしたので、主さまは背を向けてその場から去ると、一路鬼族の隠れ里を目指した。
結界を張られている里は常人には近付くことができず、ほとんど里に帰ることのなかった主さまは難なく結界内に入り込むと、気配を察知した同胞にあっという間に囲まれて、瞳を細めた。
「あなたは先代の…!」
「親父は居るか?近くの池に居るからそこまで来いと伝えてくれ」
端的に告げてまたすぐ結界の外に出た主さまは、里の近くにあるため池の前で父を待ち受ける。
しばらくするとがさりと草を踏みながら姿を現した父の潭月を確認した主さまは、両腕を広げてにじり寄って来る潭月を躱して牙をむき出しにした。
「気持ち悪いことをするな」
「俺に会いに来たんだろう?息子を抱擁しようとして何が悪い?さあ来い」
「叩き斬るぞ。用があって来た。息吹が待っているからすぐに戻らなければならない。話を聞け」
つれなくされて仕方なく腕を下げた潭月は、腰に手をあてて遠くに見える高千穂峰を見上げた。
「銀の件だな?お前はかつて争った奴を助けるつもりなのか?お人よしにも程があるぞ」
「銀と夫婦になる若葉は息吹が育てたようなものだ。このままでは病で10年程で死んでしまう。若葉が死んでしまえば銀は再び荒れて俺が殺さなければならなくなる。それに息吹は銀と仲が良い。…悲しませたくない」
「お前は相変わらず妻命だな。まあ俺もそうだが」
潭月はしばらくの間顎に手を添えて考え事をしていたが、愛しい息子の為に決断を下した。
「よし、俺に任せておけ。だがお前には見届けてもらうぞ。百鬼夜行に遅れても俺は知らないからな」
無邪気に笑い、また高千穂峰に目を遣った。

