主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「十六夜…神仏が存在するのならば、若葉を救ってはもらえないだろうか。その為ならば、俺はなんでもする」


百鬼夜行から戻って来た主さまを縁側で待ち構えていた銀は、主さまに無理矢理盃を持たせて愚痴った。

実際息吹阿修羅が降臨したし、妖である自分たちも、祖を辿れば何者かから作り出されたはずだ。

たった10年ぽっちで若葉を亡くしてしまうことが耐えられない銀は、主さまに救いを求めて黙っている主さまを食い入るように見つめた。


「…太古の時代、高千穂に神が舞い降りたと言われている。故に高千穂は天孫降臨の地。我々鬼族も起源を辿れば高千穂の生まれ。俺の親父やお袋は未だに高千穂にある里に住んでいる」


「そうか。若葉が眠っている間、高千穂に通って祈祷してきたい。若葉に俺の留守を問われた時…適当に言い訳をしておいてくれと息吹に伝えてくれ」


「聞いてるよ銀さん。銀さん…若葉のことを本当に大切に想ってるんだね。若葉は私に任せておいて。神様は絶対居るよ、銀さん、祈り続けてね」


「ああ。高千穂程度の距離ならば俺の脚でひとっ飛びだ。早速だが行って来る。若葉を頼む」


銀の尻尾と耳がぴょこぴょこと動き、ここ1年ほどは全く動かなくなったことを憂いていた息吹は、銀に元気が戻ったことを喜びながらも、神に縋ってしまうほどに若葉を愛しく想っている銀の心に感動して涙ぐんだ。

そして白銀の狐の姿に変化した銀は、9つの尻尾をひらめかせながら空を駆けていき、あっという間に見えなくなる。

息吹は強い酒を胃に流し込んで顔をしかめていた主さまの腕に抱き着いて夫婦の部屋に入ると、少し不安そうな声で主さまに問いかけた。


「高千穂って言ったら…主さまの実家が近くにあるんじゃないの?ってことは…」


「ああそうだな、親父がちょっかいを出す恐れがある。確か銀とは気が合ったはずだから、悪いようにはしないだろう。…多分」


多分、と付け加えて床に横になった主さまに膝枕をしてやった息吹は、櫛で髪を梳いてやりながらくすりと笑った。


「潭月さんはからかうのが大好きだもんね。主さまだってからかわれ続けたんでしょ?」


「嫌というほどからかわれた。おかげで俺は今でも親父が得意ではない」


「ふふっ、もしかしたら潭月さんが銀さんを慰めてくれるかも。銀さんと若葉…ずっとずっと一緒に居れたらいいのに」


「……」


そう願わずにはいられない。