主さまは全くといっていいほど、息吹に頭が上がらない。
それにいつも小さな子供たちの面倒を見てくれて、実は密かに我が子のようにも思っていた若葉が目で“殺さないで”と訴えてくるので、考えた結果、主さまが下したのは…
「丙…お前は即刻若葉と離縁し、家に戻れ。そしてそこの情婦を妻に娶り、今後一切二度と若葉と話したり会うことを禁じる。…その腹の中のお前の子を父無き子にするな。周囲からは不貞を働いたとして冷たい目で見られ、お前は死よりもつらい目に遭う。この約束を違えるな。違えた場合、お前は百鬼の餌となる」
「今違えたっていいんだぜー!俺たちが骨も残らす食ってやる!」
庭からは日中でも活動できる妖力の強い妖たちが歓喜の声を上げ、また丙たちを萎縮させた。
だが丙からすれば、今後若葉と一切会えなくなるのは…とてつもなくつらく、悲しい。
若葉を裏切って、あまつさえ子まで作ってしまった過ちは若葉を苦しませて、自殺未遂にまで追い込んだ。
そんな若葉は、正座したままじっと動かずに…手を握ってくれていた。
「………はい…。約束………します…」
「念書など必要ない。お前の魂に誓った。若葉はお前と離縁し、銀と夫婦になる若葉はもうお前の家に戻らない。白無垢もくれてやる」
「え…っ、主さまっ」
息吹が抗議の声を上げたが、主さまはそれを手で制して切れ長の瞳をすうっと細くした。
「そんな縁起の悪いものを俺の屋敷に持ち込むな。いいな?」
「……はい。私には縁起のいいものだったのに…」
しゅんとなった息吹を慰めようと雪男が腰を上げかけたが、主さまが射抜くような瞳で雪男を睨みつけると、唇を尖らせながらまた胡坐をかいて座り直した。
「さあ、お前たちはもう帰れ。丙の両親は妻となる情婦を責めることなく受け入れろ。今後一切ここ1年間若葉と暮らした日々を思い出さず忘れる努力を続けろ。…わかったか?」
声色を下げて問うた主さまに皆がまた平伏したが、銀は丙の腕を掴んで無理矢理立たせると、丙を静かな瞳で見下ろした。
「お前に問いたいことがある。少し顔を貸せ」
「ぎんちゃん乱暴なことしないで」
「しない。お前は隣の部屋に戻って寝ていろ。すぐに戻る」
銀の爪が腕に食い込んだが、丙はじっと耐えて引きずられるようにして屋敷の外に出された。
若葉は丙の両親と、丙の妻となる情婦に頭を下げると、朔に支えてもらいながら部屋を出て、大切にしてくれた丙の両親に心から詫びて、朔の腕にもたれ掛った。
それにいつも小さな子供たちの面倒を見てくれて、実は密かに我が子のようにも思っていた若葉が目で“殺さないで”と訴えてくるので、考えた結果、主さまが下したのは…
「丙…お前は即刻若葉と離縁し、家に戻れ。そしてそこの情婦を妻に娶り、今後一切二度と若葉と話したり会うことを禁じる。…その腹の中のお前の子を父無き子にするな。周囲からは不貞を働いたとして冷たい目で見られ、お前は死よりもつらい目に遭う。この約束を違えるな。違えた場合、お前は百鬼の餌となる」
「今違えたっていいんだぜー!俺たちが骨も残らす食ってやる!」
庭からは日中でも活動できる妖力の強い妖たちが歓喜の声を上げ、また丙たちを萎縮させた。
だが丙からすれば、今後若葉と一切会えなくなるのは…とてつもなくつらく、悲しい。
若葉を裏切って、あまつさえ子まで作ってしまった過ちは若葉を苦しませて、自殺未遂にまで追い込んだ。
そんな若葉は、正座したままじっと動かずに…手を握ってくれていた。
「………はい…。約束………します…」
「念書など必要ない。お前の魂に誓った。若葉はお前と離縁し、銀と夫婦になる若葉はもうお前の家に戻らない。白無垢もくれてやる」
「え…っ、主さまっ」
息吹が抗議の声を上げたが、主さまはそれを手で制して切れ長の瞳をすうっと細くした。
「そんな縁起の悪いものを俺の屋敷に持ち込むな。いいな?」
「……はい。私には縁起のいいものだったのに…」
しゅんとなった息吹を慰めようと雪男が腰を上げかけたが、主さまが射抜くような瞳で雪男を睨みつけると、唇を尖らせながらまた胡坐をかいて座り直した。
「さあ、お前たちはもう帰れ。丙の両親は妻となる情婦を責めることなく受け入れろ。今後一切ここ1年間若葉と暮らした日々を思い出さず忘れる努力を続けろ。…わかったか?」
声色を下げて問うた主さまに皆がまた平伏したが、銀は丙の腕を掴んで無理矢理立たせると、丙を静かな瞳で見下ろした。
「お前に問いたいことがある。少し顔を貸せ」
「ぎんちゃん乱暴なことしないで」
「しない。お前は隣の部屋に戻って寝ていろ。すぐに戻る」
銀の爪が腕に食い込んだが、丙はじっと耐えて引きずられるようにして屋敷の外に出された。
若葉は丙の両親と、丙の妻となる情婦に頭を下げると、朔に支えてもらいながら部屋を出て、大切にしてくれた丙の両親に心から詫びて、朔の腕にもたれ掛った。

