まだ体力の回復していない若葉がまたすぐに眠り、明け方主さまが様子を見に行くと、添い寝をしてやっていた銀を見つけて口がへの字になった。
「…何をしている」
「添い寝だ。まあ添い寝以外のこともしたが」
「なに?お前という奴は…もう若葉に手を出したのか?」
「お前ほど手は早くない。唇を奪っただけだ」
あけすけもなく告白して腕枕をしてやっている銀は、穏やかな表情を浮かべていた。
主さまは部屋の入り口でしばらく立っていたが、中へ入るとその後ろには晴明が続いていた。
晴明が煎じた薬のおかげで若葉の命が助かったことを感謝するために起き上がろうとすると、晴明はそれを手で制して烏帽子を取ると、枕元に腰を下ろした。
「夫婦になる約束はしたか?」
「お前はなんでもお見通しだな。先程約束を交わした。離縁を取り付けるために丙と話す必要がある。十六夜、丙に会わせてくれ」
「丙だけではなく丙の両親と丙の情婦も呼び付ける。…銀、お前だけが若葉の心配をしていたわけじゃない。俺や晴明もずっと案じていた。だから始末はちゃんとつける」
「…殺すのか?」
「情けはかけない。かける必要もない。若葉が目覚めてから話をする。それから…晴明から話がある」
とても大切な話をしようとしている――
勘付いた銀は若葉が起きないようにゆっくり身体を起こして床から出ると、背筋を正して晴明と向かい合った。
いっとき沈黙が流れた後、その沈黙に耐えられなくなったのは、銀だった。
「…よくない話のようだな」
「ああそうだ。銀よ…若葉は…長くない」
「…命がか?」
「眠っている間に診たのだが、肺をやられている。持って10年…私の煎じた薬を飲み続ければ、もう少しは長く生きることができるかもしれぬが…」
若葉は人の寿命を全うできない――
だが銀は嘆くこともなく声を荒げることもなく、儚く笑うと、安らかな寝息を立てている若葉の長い髪を撫でて、難しい顔をしている晴明と主さまをからかった。
「だからなんだ?持って10年と言ったな。俺はその10年を誰よりも濃密に若葉と共に生きてゆく。何も嘆くことはない。俺の元に戻って来てくれたんだ。何を難しい顔をしているんだ?だが晴明、薬を頼む。それと十六夜…」
「お前に10年猶予をやる。その間は百鬼として百鬼夜行に参加しなくともいい。…早くうちの子たちの遊び相手を作れ」
「助かる。来年にはその願いが叶うだろう。助かる…」
繰り返し感謝の意を述べて若葉を見つめる銀の優しい眼差しには、愛が込められていた。
「…何をしている」
「添い寝だ。まあ添い寝以外のこともしたが」
「なに?お前という奴は…もう若葉に手を出したのか?」
「お前ほど手は早くない。唇を奪っただけだ」
あけすけもなく告白して腕枕をしてやっている銀は、穏やかな表情を浮かべていた。
主さまは部屋の入り口でしばらく立っていたが、中へ入るとその後ろには晴明が続いていた。
晴明が煎じた薬のおかげで若葉の命が助かったことを感謝するために起き上がろうとすると、晴明はそれを手で制して烏帽子を取ると、枕元に腰を下ろした。
「夫婦になる約束はしたか?」
「お前はなんでもお見通しだな。先程約束を交わした。離縁を取り付けるために丙と話す必要がある。十六夜、丙に会わせてくれ」
「丙だけではなく丙の両親と丙の情婦も呼び付ける。…銀、お前だけが若葉の心配をしていたわけじゃない。俺や晴明もずっと案じていた。だから始末はちゃんとつける」
「…殺すのか?」
「情けはかけない。かける必要もない。若葉が目覚めてから話をする。それから…晴明から話がある」
とても大切な話をしようとしている――
勘付いた銀は若葉が起きないようにゆっくり身体を起こして床から出ると、背筋を正して晴明と向かい合った。
いっとき沈黙が流れた後、その沈黙に耐えられなくなったのは、銀だった。
「…よくない話のようだな」
「ああそうだ。銀よ…若葉は…長くない」
「…命がか?」
「眠っている間に診たのだが、肺をやられている。持って10年…私の煎じた薬を飲み続ければ、もう少しは長く生きることができるかもしれぬが…」
若葉は人の寿命を全うできない――
だが銀は嘆くこともなく声を荒げることもなく、儚く笑うと、安らかな寝息を立てている若葉の長い髪を撫でて、難しい顔をしている晴明と主さまをからかった。
「だからなんだ?持って10年と言ったな。俺はその10年を誰よりも濃密に若葉と共に生きてゆく。何も嘆くことはない。俺の元に戻って来てくれたんだ。何を難しい顔をしているんだ?だが晴明、薬を頼む。それと十六夜…」
「お前に10年猶予をやる。その間は百鬼として百鬼夜行に参加しなくともいい。…早くうちの子たちの遊び相手を作れ」
「助かる。来年にはその願いが叶うだろう。助かる…」
繰り返し感謝の意を述べて若葉を見つめる銀の優しい眼差しには、愛が込められていた。

