若葉が目覚めた時、銀は手を握ったまま片時もその場から動いていないように見えた。
もしかしたら入水自殺に成功して、先程銀に告白を受け入れてもらえたことは幸せな夢なのかもしれない――
いまいち自信のない若葉が握った手に力を込めると、銀は耳をぴょこんと動かして切れ長の濃紺の眼差しでやわらかく笑いかけてきた。
「ぎんちゃん…」
「薬が効いたおかげでよく眠っていたな。晴明に感謝しなければ」
「これって…夢じゃないよね…?ぎんちゃんが…女遊びの大好きなぎんちゃんが私を好きなんて…」
「女はもうお前だけでいい。まだ夢だと思っているのか?ならば確かめてみろ」
もそりと床に潜り込んできた銀のふわふわの尻尾が太股に巻き付き、腰を強く抱かれて引き寄せられると――そこはいつの間にか銀の腕の中だった。
懐かしい匂いがして、思わず大きく息を吸い込んだ若葉は、銀の胸に頬ずりをして温もりを確かめた。
「ぎんちゃん…本物だ…。どうしよう、すごく嬉しい…」
「女の匂いがする…。離れた時は微かにしか匂わなかったが…女になったんだな。…丙が憎い」
首筋に顔を寄せてくんくん匂いを嗅がれると、さすがに少し恥ずかしくなって銀に喉輪をして離れさせた。
だが意地悪な銀はまた顔を寄せてきて匂いを嗅ぎまくり、抵抗を諦めた若葉は銀の尻尾を撫でながら、丙との夫婦生活がどんなものだったかを言おうか言うまいか悩んでいた。
――丙とはひとつの床に一緒に寝ていたが、それ以上のことはない。
かろうじて口づけだけは許したが、“嬉しい”という感情は沸かなかった。
銀となら…どんな気分になるのだろうか?
「ひのえちゃんは…悪くないの。よそに女の人と赤ちゃんを作ったのだって私が原因で…」
「話さなくていい。聞きたくない。若葉…俺と夫婦になろう。丙とは離縁して、一切を捨てて俺の元へ戻って来てくれ。お前を妻にしたい。お前との子が欲しい。…お前の全てが欲しいんだ」
「…ぎん、ちゃん…」
呆気にとられながらも銀が求めてくれたことが嬉しくて、顔を上げて銀の唇を見つめると、銀は手で若葉の両目を塞ぎ、深く唇を割って口づけをして、跳ねる若葉の身体を押さえ込んで続行した。
若葉から返事はなかったが、唇は応えてくれた。
それが、若葉の答えだった。
もしかしたら入水自殺に成功して、先程銀に告白を受け入れてもらえたことは幸せな夢なのかもしれない――
いまいち自信のない若葉が握った手に力を込めると、銀は耳をぴょこんと動かして切れ長の濃紺の眼差しでやわらかく笑いかけてきた。
「ぎんちゃん…」
「薬が効いたおかげでよく眠っていたな。晴明に感謝しなければ」
「これって…夢じゃないよね…?ぎんちゃんが…女遊びの大好きなぎんちゃんが私を好きなんて…」
「女はもうお前だけでいい。まだ夢だと思っているのか?ならば確かめてみろ」
もそりと床に潜り込んできた銀のふわふわの尻尾が太股に巻き付き、腰を強く抱かれて引き寄せられると――そこはいつの間にか銀の腕の中だった。
懐かしい匂いがして、思わず大きく息を吸い込んだ若葉は、銀の胸に頬ずりをして温もりを確かめた。
「ぎんちゃん…本物だ…。どうしよう、すごく嬉しい…」
「女の匂いがする…。離れた時は微かにしか匂わなかったが…女になったんだな。…丙が憎い」
首筋に顔を寄せてくんくん匂いを嗅がれると、さすがに少し恥ずかしくなって銀に喉輪をして離れさせた。
だが意地悪な銀はまた顔を寄せてきて匂いを嗅ぎまくり、抵抗を諦めた若葉は銀の尻尾を撫でながら、丙との夫婦生活がどんなものだったかを言おうか言うまいか悩んでいた。
――丙とはひとつの床に一緒に寝ていたが、それ以上のことはない。
かろうじて口づけだけは許したが、“嬉しい”という感情は沸かなかった。
銀となら…どんな気分になるのだろうか?
「ひのえちゃんは…悪くないの。よそに女の人と赤ちゃんを作ったのだって私が原因で…」
「話さなくていい。聞きたくない。若葉…俺と夫婦になろう。丙とは離縁して、一切を捨てて俺の元へ戻って来てくれ。お前を妻にしたい。お前との子が欲しい。…お前の全てが欲しいんだ」
「…ぎん、ちゃん…」
呆気にとられながらも銀が求めてくれたことが嬉しくて、顔を上げて銀の唇を見つめると、銀は手で若葉の両目を塞ぎ、深く唇を割って口づけをして、跳ねる若葉の身体を押さえ込んで続行した。
若葉から返事はなかったが、唇は応えてくれた。
それが、若葉の答えだった。

