息吹のために早く大きくならなきゃ――
想いが募り、想いが形となり、息吹たちが目を離している隙に青白い核はみるみる大きくなっていった。
また息吹たちが話しかけてくれている内容もしっかり聴こえていたし、ただ…またその姿を見ることができないでいる。
――俺…早く大きくなって、息吹を守るんだ。主さまが居ない時は誰が息吹を守っているんだ…?俺が行かなきゃ。俺が…!
想いに比例して氷がぱきぱきと音を立てて大きくなり、青白い核も一気に大きくなった。
全部全部、思い出していた。
命を懸けて息吹を守ったこと…
この命を息吹のために使おうと決めたこと――
…相思相愛になれば、惚れた女に触れてもこの身が溶けることはないが…あっさりと溶けてしまって、本当に後1歩で死ぬところだったのを晴明に救われたのは奇跡としか言いようがない。
――息吹とは夫婦になれなかったけど、息吹が俺が戻って来るのを待ってくれているんだ…、だから早く大きくなれ。大きくなれ…!
自分自身に念じているうちにまた大きくなり、気付けば大人の男が両腕を広げる程の大きさになっていた雪男は、母親の胎内にいる時のように身体を丸めて念じ続けていた。
「氷雨…!?あなたもうこんなに大きくなって…!」
日に何度も様子を見に来る母の雪女が驚いた声を上げて縋り付いて来ると、雪男はまた強く念じた。
“母を独りにさせるわけにはいかない”と。
「氷雨…あなたの帰りを皆が待ちわびているわよ。主さまも…息吹さんも…私も…!あなたはあの人の忘れ形見なの。氷雨…私を独りにしないで…お願い…!」
からからと音を立てて床に散らばる音がした。
母が泣いているのだと気付いた雪男はまた強く念じて、少しずつではあるが手足が動くのを確認すると、父母と暮らしたこと…百鬼に加わったこと…息吹の教育係に任命されて最初は渋々引き受けて世話をしたことを順繰りに追って、さらに鮮明に己の形を確かなものにした。
――母さん…待っててくれよ、俺もうすぐこの氷から出て母さんも息吹も主さまも守るから…だから泣かないでくれよ。
「…氷雨…?」
ぴかぴかと光る青白い核の優しい色は、まるで雪女を慰めるように何度も点滅して白い美貌に笑みを取り戻させることに成功した。
「待っているわ…氷雨…。息吹さんが平和に暮らせるようにあなたが守るのよ。氷雨…」
形を確かなものにする。
想いが募り、想いが形となり、息吹たちが目を離している隙に青白い核はみるみる大きくなっていった。
また息吹たちが話しかけてくれている内容もしっかり聴こえていたし、ただ…またその姿を見ることができないでいる。
――俺…早く大きくなって、息吹を守るんだ。主さまが居ない時は誰が息吹を守っているんだ…?俺が行かなきゃ。俺が…!
想いに比例して氷がぱきぱきと音を立てて大きくなり、青白い核も一気に大きくなった。
全部全部、思い出していた。
命を懸けて息吹を守ったこと…
この命を息吹のために使おうと決めたこと――
…相思相愛になれば、惚れた女に触れてもこの身が溶けることはないが…あっさりと溶けてしまって、本当に後1歩で死ぬところだったのを晴明に救われたのは奇跡としか言いようがない。
――息吹とは夫婦になれなかったけど、息吹が俺が戻って来るのを待ってくれているんだ…、だから早く大きくなれ。大きくなれ…!
自分自身に念じているうちにまた大きくなり、気付けば大人の男が両腕を広げる程の大きさになっていた雪男は、母親の胎内にいる時のように身体を丸めて念じ続けていた。
「氷雨…!?あなたもうこんなに大きくなって…!」
日に何度も様子を見に来る母の雪女が驚いた声を上げて縋り付いて来ると、雪男はまた強く念じた。
“母を独りにさせるわけにはいかない”と。
「氷雨…あなたの帰りを皆が待ちわびているわよ。主さまも…息吹さんも…私も…!あなたはあの人の忘れ形見なの。氷雨…私を独りにしないで…お願い…!」
からからと音を立てて床に散らばる音がした。
母が泣いているのだと気付いた雪男はまた強く念じて、少しずつではあるが手足が動くのを確認すると、父母と暮らしたこと…百鬼に加わったこと…息吹の教育係に任命されて最初は渋々引き受けて世話をしたことを順繰りに追って、さらに鮮明に己の形を確かなものにした。
――母さん…待っててくれよ、俺もうすぐこの氷から出て母さんも息吹も主さまも守るから…だから泣かないでくれよ。
「…氷雨…?」
ぴかぴかと光る青白い核の優しい色は、まるで雪女を慰めるように何度も点滅して白い美貌に笑みを取り戻させることに成功した。
「待っているわ…氷雨…。息吹さんが平和に暮らせるようにあなたが守るのよ。氷雨…」
形を確かなものにする。

